2008年の「DM10」発売以来、テキスト入力に特化したフルキーボード搭載のデジタルメモツールとして、根強い人気を誇るキングジムの「ポメラ」。その4年ぶりの新モデル「DM250」が22年7月に登場した。250台限定のホワイトモデルが初日に完売するなど存在感は健在。新機種の見どころを探った。
「『ポメラ』DM250」(以下ポメラ)は、モノクロの小さな画面とキーボードに機能を絞り込み、テキスト入力に特化した機器だ。ポメラが最初に登場した2008年はiPhoneが出たばかりで、1㎏以下のノートパソコンもあまり選択肢が多くなかった。そんな中で、モノクロ液晶で通信機能がない代わりに軽量でバッテリー駆動時間が長いポメラは、メモ取りや原稿入力など様々なテキスト入力専用のガジェットとして貴重な存在だった。しかし、iPadなどのタブレットや2in1パソコンが増え、次第にポメラの優位性は相対的に下がってきたといえる。そのためか、18年発売の「DM30」を最後に4年間、ポメラの新機種は出ていなかった。
そんな中で登場した新製品のDM250は、16年発売の「DM200」とほぼ同じ外観だ。テキスト入力専用マシンという当初からのコンセプトは変えないまま、市場に打って出たように見える。久しぶりの新製品だけに注目度は高いが、スマートフォンの使用が一般的になり、テキスト入力を巡る状況がかなり変化している中で勝ち目はあるのだろうか。キングジム開発本部の清水翔平氏も、「DM200の時点で、モノを書くためのデバイスとしては必要十分な条件を満たしていたし、実際、まだ使い続けている愛用者も多い。その一方で、世の中も変わっていて、技術も進歩している中で、陳腐化しないようなアップデートは必要だと考えた」と、開発時の問題意識を語る。
スマホでの簡単なメモをポメラで仕上げられる「ポメラLink」
スマホ時代に対応すべく、新型ポメラで最も大きく変わった点といえるのが、スマホとの連携に特化したアプリ「pomera Link(ポメラLink)」の導入だ。スマホとDM250をWi-Fiで接続することで、ポメラ内のファイルをスマホに転送したり、逆にスマホのファイルをポメラに転送したりできる。
使いやすさだけを考えたら、DropboxやOneDriveなどのクラウドとポメラ内のファイルを同期できるのがベストだ。しかし、それにはインターネットへの常時接続が必要になり、バッテリーの持ちが悪くなる。DM200のように同期するときだけクラウドに接続する手もあるが、まず宅内のWi-Fiに接続して、その後にクラウドに接続してといった煩雑な操作が必要だった。また接続も安定しなかった。DM250では、その代わりにスマホとの連携を強化したようだ。
清水氏はポメラLinkの特徴について、「クラウド連携が難しい代わりに、スマホとの連携を強化することになった。スマホ用アプリの開発では、単にポメラとの接続用にするのでなく、スマホでメモの新規作成ができて、そのメモをポメラに送れるとよいと考えた」と説明する。つまり、「スマホで大まかなメモを取って、ポメラで仕上げる」というスタイルを可能にしているのだ。このアプリの存在が、16年のDM200発売時と現在の「文章を書く」環境の変化を表しているように思う。
これまでは、メモから長文まですべてポメラでこなす前提だったが、今は長文を書く専用ツールにシフトチェンジしているのだ。細かなメモ取りは基本的にスマホを使い、それを基に長文の文章を書く必要が出たときはポメラLinkで転送する運用ができる。ポメラで書きかけた文章をスマホに送って、電車の中などでスマホで修正してからポメラに送り返して続きを書くといったことも可能にした。これらが簡単にできるようになったのが個人的には一番うれしい。前モデルにあった、Gmailを経由してのiPhoneやMacのメモアプリとの同期機能「ポメラ Sync」はiPhoneやMacだけの対応だったが、ポメラLinkはAndroidにも対応でき、誰でも使えるようになった。
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