リラクゼーションスタジオ「Re.Ra.Ku」などのヘルスケア事業を営むメディロム(東京・港)が発売した活動量計「MOTHER Bracelet」が初回出荷分を1日で完売するなど出足好調だ。「温度差で発電する」という特徴は世界初で、Apple Watchなどの多機能スマートウオッチに挑む。同社にその勝算を聞いた。
メディロムの「MOTHER Bracelet」は、腕に着けるリストバンド型の活動量計だ。温度、加速度、ジャイロスコープ(角速度)、心拍などのセンサーを搭載し、歩数、睡眠、体表温、心拍数、消費カロリーの5項目を測定できる。体表温が測定できるのは珍しいが、アップルの「Apple Watch」に比べると機能は少なく、実勢価格4万4000円(税込み)と安くもない。にもかかわらず、同社ECサイトでの一般販売では、初回出荷分を1日で完売する好スタートを切った。現時点では、中国のロックダウン(都市封鎖)の影響で生産数が限られており、同社では2022年6月の販売再開を目指している。
MOTHER Braceletが画期的なのは、充電を不要としたことだ。Apple Watchのように時計としても使うスマートウオッチは、毎日のように充電が必要な製品が多い。Apple Watchの駆動時間は最新のSeries 7で最大18時間と、1日に満たない。より小型なリストバンド型の活動量計は駆動時間が長いが、それでも数日から2週間に一度は充電する必要がある。24時間365日装着できれば、外したときに着け忘れることがないし、継続してデータが取れることで新たな健康改善提案ができるなどの期待がある。
充電不要にするため、MOTHER Braceletは2つの発電機能を搭載する。1つは、活動量計としては世界初となる温度差発電だ。これは物体の温度差が電圧に直接変換される「ゼーベック効果」という現象を利用して発電する技術で、米国のMATRIX Industriesとの提携により共同開発した。気温と体温との温度差が1度以上あれば発電可能だという。もう1つは、本体表面のソーラーパネルによる太陽光発電だ。温度差による発電量が少なくなる真夏の屋外などでは、太陽光発電で補うという設計になっている。
クラウドファンディングでは「最初の3日」に勝負をかけた
メディロムは、20年1月には米国での展示会「CES 2020」でMOTHER Braceletの試作機を発表していたが、新型コロナウイルス禍により開発は延期されていた。事実上、国内で最初に注目されたのは、クラウドファンディングサイトのMakuake上で21年7月に開始した先行予約だ。プロジェクト期間中の55日間で5610万円以上を売り上げ、ヘルスケア製品としての新記録を打ち立てた。この勢いが、一般販売の出足の良さにもつながっている。
Makuakeで好調だったのは、「充電不要」という世界初のコンセプトが受けたのはもちろんだが、メディロム側の努力もあった。同社従業員の知人や、300店舗以上を運営するリラクゼーションスタジオ「Re.Ra.Ku」の利用者を対象に、MOTHER Braceletをアピールするキャンペーンを事前に実施したのだ。メディロム ヘルステックグループMOTHERチームの中村大睦氏は、「クラウドファンディングを成功させるには、最初の3日間が最も重要。その間に人が殺到すれば『人気があるなら試してみよう』と考える人がさらに集まり、プロジェクト期間全体の売り上げを最大化できる」と力を入れた理由を語る。このもくろみが当たり、Makuakeでは初日に2000万円以上の売り上げを達成。その後も順調に伸ばすことができた。
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