食感が楽しかったり、面白かったりする食品はそれだけで話題になり、ヒットに一歩近づく。ハウス食品がユニークな食感の調味料を発売、訴求する相手は魚嫌いの子供と手ごわいが、一体どんな商品なのか。

「ガーリックバター風味のサーモン焼き」と「トマトチーズ風味のサーモン焼き」の2種類で、実勢価格は税込み170円。魚2~3切れ分で1回使い切りタイプだ。パッケージは、テーマパークにある落ち着いた照明のレストランで、家族そろって外食を楽しむ思い出のイベントシーンをイメージしたという(写真提供/ハウス食品)
「ガーリックバター風味のサーモン焼き」と「トマトチーズ風味のサーモン焼き」の2種類で、実勢価格は税込み170円。魚2~3切れ分で1回使い切りタイプだ。パッケージは、テーマパークにある落ち着いた照明のレストランで、家族そろって外食を楽しむ思い出のイベントシーンをイメージしたという(写真提供/ハウス食品)

 「味がおいしい」だけでは食品が売れない時代だ。「とろっと」「もっちり」などに代表されるように、口の中で立体的に広がる食感はヒットにつながりやすい。直近では「ふわしゅわ」といった言葉で食感が表現される台湾カステラが人気だ。2021年8月23日、ハウス食品が発売した新商品の食感を端的に言えば「ザックザック」。このユニークな食感を、魚嫌いの子供やその親にアピールする。

 食品スーパーに並び始めた調味料「ザックザックフィッシュ」は生サーモンやマダラ、メカジキなどの切り身にまぶし、フライパンで焼いて調理する。パン粉やコーンフレークなど4種類の衣素材を混ぜている点がポイントで、商品名が示す通り、ザックザックとした食感を味わえるという。発売早々、同じ魚用調味料カテゴリーで首位を走っていた競合と肩を並べる売れ行きを見せた食品スーパーもあるなど、販売初速は良く、増産を予定している。

 この商品を開発した食品事業四部ビジネスユニットマネージャーの浅井美奈子氏は、「食感に加えて見た目も含め、消費者の家庭で子供たちにわーっと喜んでもらうのが狙い。衣素材は様々な候補素材から4種類に絞り、量の比率やそれぞれの粒度について検討を重ねた」と説明する。その4種類とは先述のパン粉、コーンフレークに加えて、でん粉や大豆を加工した衣素材。食感は順にサックリ、カリカリ、ガリガリ、サクサクという特徴を持つ。

 ザックザックという食感を追求した姿勢がうかがえ、実際はどんなものかが気になるところだ。サーモンにまぶして調理したところ、そのうたい文句は高い水準でかたちになっていると感じた。様々な硬さを同時に感じる複雑なかみ応えで、一言で表せば確かに「ザックザック」という表現が近い。サーモンの軟らかな身とのコントラストが際立つ点も、そう感じさせる一因だろう。揚げたわけではないのに揚げ物の衣特有の軽快な食感や、ゴツゴツとした存在感のある見た目も含めて、子供が喜ぶだろうという印象を受けた。

「子供は魚が嫌い」は本当か?

 長くいわれている魚離れの原因は複雑だ。まず、調理する親の心理。「魚は骨や内臓の処理が面倒なうえ、加熱時に身が崩れやすかったり、部屋が臭くなったりする」と思いつつも、「子供には、やっぱり魚を定期的に食べてほしい」と考えている。しかし、そうしたハードルを乗り越えて調理しても、子供はなかなか食べてくれないという現実がある。

 とはいえ、子供は魚そのものを嫌いなのではない。そう指摘するのは、浅井氏の上長、食品事業四部次長の野原誠司氏だ。「例えば回転すし店の普及により、すしが子供にとって身近な食べ物になった。マヨネーズを使ったサラダ巻きなどは子供たちの好物で、刺し身としてならサーモンが一番人気になっている」(野原氏)

 そこで、浅井氏ら開発陣が「子供が喜んで食べる魚料理」として目を付けた切り口が、食感や見た目だ。「焼き魚や煮魚は子供の目から見ると地味で、ボリューム感も乏しい。食卓に上ると『えー、嫌だ』と言われてしまうメニューになっていて、全般的に華やかで存在感がある肉料理とは対照的。ただ、そうした子供も、アジフライは比較的食べるということが消費者調査で分かり、それもヒントになった」(浅井氏)

 実は、開発当初、開発陣が念頭に置いていた食感は「サクサク」だった。しかし、「商品に驚きがあるユニークさを持たせたい」という視点が加わり、「ザックザック」な食感や見た目にたどり着いたという経緯がある。

衣素材はパン粉やコーンフレークなど4種類。魚の臭みを消し、味を引き立てるスパイスやハーブを配合し、子供が好む味わいにしている
衣素材はパン粉やコーンフレークなど4種類。魚の臭みを消し、味を引き立てるスパイスやハーブを配合し、子供が好む味わいにしている

 家庭料理の調味料として新規性があるこの食感は、ハウス食品が食品スーパーに営業を展開するときにも役立っている。これまで加工食品の分野でブランド力を築いてきた同社だが、ザックザックフィッシュはそうした売り場には置かれない。新たな売り場は鮮魚コーナーの一角だ。浅井氏は「鮮魚コーナーでの商品展開は、新しい販路を見いだしたいという狙いの下、17年から取り組んでいるが、当社は後発組なのでこれまでのブランド力はまだ通用しない。ザックザック食感は、競合商品が並ぶ売り場に食い込むための戦略でもある」と狙いを明かす。

 実際、鮮魚の購入頻度低下に悩む部門バイヤーからは、「売り場は和テイストの調味料が多く、商品名も含めて子供に受けそう」と好意的な反応が返ってきているという。鮮魚売り場を歩きながら、どんなメニューなら子供が積極的に食べるかと頭を悩ませている親の目に留まりやすいメリットも生まれる。

 近年、鮮魚売り場に置かれる調味料は食品メーカーがラインアップを充実させていて、市場規模は微増。20年以降は新型コロナウイルス感染症拡大による食卓回帰を追い風にして、さらに伸びている。このカテゴリーではブランド単体で年間5億~6億円を売り上げれば大ヒットといわれるが、ザックザックフィッシュの初年度の売り上げ目標は3億円と控えめ。アレンジレシピを提案しながら、ブランドを中長期的に育てていく考えだという。「魚をもっと売りたいと考えている食品スーパーの鮮魚部門の方々と一緒に、魚料理を盛り上げていきたい」(浅井氏)

最大の特徴である食感を持つ衣からは、見た目からしてザックザック感が伝わる。糖やでんぷんを活用した技術により、魚の切り身に付きやすく、剥がれにくいようにした(写真提供/ハウス食品)
最大の特徴である食感を持つ衣からは、見た目からしてザックザック感が伝わる。糖やでんぷんを活用した技術により、魚の切り身に付きやすく、剥がれにくいようにした(写真提供/ハウス食品)
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