新型コロナウイルス感染症の拡大により、自宅で過ごす時間が増えた。過ごし方の1つとして楽器演奏に取り組み始めた人は多く、その流れもあって新たに登場した楽器が話題になっている。初心者でも演奏しやすくした工夫が人気の理由だ。
「誰でも演奏できる楽器」をうたう「インスタコード」が2021年9月に発売された。今までにも扱いやすさを打ち出した楽器はあったが、その多くはあらかじめセットされた曲を弾きやすくしているだけだったり、指1本でコードを自動伴奏してくれたりといったレベルにとどまった。インスタコードは、3分程度の練習で誰でも弾き語りや合奏ができる楽器ガジェットという点で一線を画す。製作費を募ったクラウドファンディングでは7900万円を集め、初期ロットは予約分でほぼ完売という人気ぶりだ。
インスタコードはウクレレのような形と大きさをしていて、ネック部分のテンキーを押しながら、ギターの弦のように配置された6つパッドをかき鳴らして演奏する。例えば1の数字キーはCのコード(和音)が、2の数字キーはDmのコードが鳴る。もちろん、これだけでは「誰でも弾ける」とは言えない。インスタコードが良くできている点は、テンキーの設定にある。
例えば、多くのヒット曲に使われている「カノン進行」と呼ばれるコード進行がある。最初のコードがCの場合、「C → G → Am → Em → F → C → F → G」と表される。曲によって最初のコードが変わるため、ギターであれば、同じカノン進行でもコードの押さえ方をたくさん覚える必要がある。
この和音の動き方は「I → V → VIm → IIIm → IV → I → IV → V」とローマ数字で表すこともでき、開発者の永田雄一氏はそのままテンキーに置き換えることを考えた。つまり、カノン進行なら、テンキーを「1 → 5 → 6 → 3 → 4 → 1 → 4 → 5」と順に押さえながら弾けばよいわけだ。これなら、後は1のキーに対応するコードを変更するだけで、多くの曲を演奏できる。テンキーなら、キーを見なくても操作できる人が多いというところがポイントだ。
「もともとは、ギターでジャラーンと弾いた音を、音楽制作アプリに簡単に入力できる装置を作るつもりでした」と、自身はギターを弾けない永田氏。コードをテンキーに置き換える仕組みを考えて試作したところ使いやすく、初心者でもギターのように演奏できるかもしれないと思いついたのがインスタコードの原点になる。
この記事は会員限定(無料)です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー

【最新号のご案内】日経トレンディ 2023年7月号
【巻頭特集】ずるい!ChatGPT仕事術
【第2特集】得する旅行術
【第3特集】シン・ツーリズム
【SPECIAL】山田涼介インタビュー
発行・発売日:2023年6月2日
特別定価:850円(紙版、税込み)
■Amazonで購入する