「味付け卵が簡単に作れた!」「1000円で完全ワイヤレスのイヤホンはコスパ高い」。このようにSNSで薦めたくなるのが、100円ショップ大手・ダイソーの商品戦略だ。便利なグッズをただ開発するだけではなく、その良さをどう伝えるかまで考えてデザインされている。SNSでついつい「いいね!」を押したくなる9商品を取り上げた。

※日経トレンディ2021年9月号の記事を再構成

 コロナ禍による外出自粛、テレワークなどを背景に、キッチン用品や日用品、文房具といった雑貨のニーズが急拡大。長らく続くデフレや消費者の節約志向も追い風にし、100円ショップが業績を伸ばし続けている。

 業界を見渡すと、SNSが火付け役となる商品が増えている。業界トップの大創産業(広島県東広島市)が運営する「ダイソー」では、2021年2月に発売した「味付けたまごメーカー」が人気商品となった。

冷蔵庫に1時間入れて味玉が完成
味付けたまごメーカー

「本体」と「落とし蓋」、「外蓋」の3パーツからなる
「本体」と「落とし蓋」、「外蓋」の3パーツからなる

 ゆで卵とめんつゆなどの調味料を入れ、簡単に味付け卵(味玉)が作れる容器。「本体」と、卵の浮き上がりを防ぐ「落とし蓋」、「外蓋」の3パーツからなる。本体に卵4つをセットし、調味料を注ぐ。落とし蓋と外蓋を付け、冷蔵庫に1時間ほど置くだけで完成する。税込み110円。

(1)卵と調味料を入れ、落とし蓋をする。(2)外蓋をして冷蔵庫で1時間放置。(3)半分に割ると、調味料が染み込んでいた
(1)卵と調味料を入れ、落とし蓋をする。(2)外蓋をして冷蔵庫で1時間放置。(3)半分に割ると、調味料が染み込んでいた

 普通に味玉を作る場合、大量の調味料が必要になるうえ、卵が浮いて味にムラができる。落とし蓋で卵を押さえ、少量の調味料で全体が浸るよう工夫を凝らした。SNS上では「簡単に作れる」「味が染み込んでいる」と話題になり、完成した味玉の写真を投稿する人も続出した。

 ヒットしたのは、消費者の悩みを解決する商品を開発したことに加え、SNSでの拡散も狙ったダイソーの戦略が当たったためだ。味の入り方や調理時間を調整し、食欲をそそるような見栄えや色合いを意識したという。広報課の岩橋理恵氏は「ヒットさせるにはSNSが欠かせなくなっている」と、その重要性を明かす。

人に薦めたい商品が次々ヒット

 調理中の課題を改善したのが、「ちょこっとまな板」シリーズ。おかずをもう一品作りたいけど、大きなまな板を出すほどでもないし、そもそもスペースがない――。そんな悩みに応えたのが、まな板をあえて小型化するアイデアだった。

まな板の“小ささ”は大きな価値
「ちょこっとまな板」シリーズ

写真左が「ちょこっとまな板」、同右が「ちょこっとまな板 ロング」
写真左が「ちょこっとまな板」、同右が「ちょこっとまな板 ロング」

 省スペース設計で、ちょっと使いたいときに便利なまな板。収納に場所を取らない、フックに引っ掛けて保管ができる、水切りスリットで食材の水気をさっと切れる、といった利便性を追求した点が大ウケした。19年12月に発売した「ちょこっとまな板」(18.5 ×18.5×2.5センチメートル)が大ヒットし、20年度のグッドデザイン賞を受賞。細長い野菜が切りやすい「ロング」(26×16×2.5センチ)を追加した。税込み110円。

 発売直後は大きな動きは無かったが、消費者が便利さに気づくまでに時間はかからなかった。小さいまな板で野菜を切る便利さが写真と共に口コミで拡散し、一気に広がっていった。


フランス製ネイルブランド
ネイルの新シリーズ「Flamboyant」「Somptueux」

 100円とは思えない使い勝手でヒットを連発しているダイソーのネイル。21年4月に「Flamboyant」「Somptueux」という2シリーズを発売し、200~300円の高価格帯でもヒット商品が出ている。写真左側の2点がピールオフネイルポリッシュ(Flamboyant、税込み220円)、中央2点がネイルポリッシュ(Somptueux、税込み220円)、右側2点がネイルオイル(Somptueux、税込み330円)。

 塗りやすさ、発色の美しさに加え、ボトルのインテリア性の高さを兼ね備えた点が若者や主婦層から支持される。カラーバリエーションが豊富であることも人気の一因で、Somptueuxのネイルポリッシュは全86色を展開する。


釣り初心者歓迎のコスパジグ
「メタルジグ」シリーズ

28g(上)、28gグロー(下)
28g(上)、28gグロー(下)

 釣りで使用する鉛で作られた疑似餌(ルアー)の1種。さおを振って飛距離を出すため、空気抵抗の少ない楕円形状を採用した。本体の重心位置を中央に持ってくることで、金属製でありながらヒラヒラと落ちていく弱った魚の動きを再現している。ジグは消耗が激しいアイテムのため、低コスト商品のニーズが高い。20年7月にシリーズを発売してから好調を維持している。YouTubeなどでレビュー動画が数多く配信されたことで人気に火が付いた。税込み110円。


 企業側から口コミ拡散を仕掛けるには、インスタグラムのダイソー公式アカウントを活用している。新商品の写真や動画をアップし続け、14年の開始から7年でフォロワーは177万人に到達。競合のキャンドゥのアカウントフォロワーは約77万人で、その2倍以上。企業アカウントの中でも上位に食い込む。

 インスタで約1万5000件の「いいね!」が付いたのが、保温性に優れた「ダブルウォールグラス(約300mL)」。掲載写真は、スプーンやコースターといった小物を効果的に配置し、一瞬見ただけで奇麗な印象を与える1枚に仕上げている。

インテリアにもなる機能性グラス
ダブルウォールグラス(約300mL)

(写真提供/ダイソー)
(写真提供/ダイソー)

 温かい飲み物は冷めにくく、冷たい飲み物は温まりにくいよう、二重構造になった耐熱ガラスのグラス。保温性が高く、結露が出ない機能性が人気となっている。インテリアの置き物として使用する人もいるという。税込み330円。


「除菌」と「拭く」をまとめて1回で
除菌ペーパータオル(120枚)

(写真提供/ダイソー)
(写真提供/ダイソー)

 シート表面に除菌剤を塗布し、拭くだけで除菌もできるペーパータオル。シートと除菌用のスプレーを別々に持ち歩く必要がなくなり、1回の動作で済むことから時短目的での購入につながっている。税込み110円。インスタでは約1万2000件の「いいね!」が付いた。

エコや効率化といったキーワードの商品も好調

 SNSで人に薦めたくなる要素として、見た目や便利さだけではなくエコや効率化の観点も入ってきているのが最近の潮流。数回洗っても使える「洗えるキッチンタオル」が一つの例だ。キッチンペーパーのように使い切る方が衛生的だが、すぐ捨てるのは環境に悪くコストもかかる。数回使えるという発想がウケた格好だ。

洗って数回使えるエコペーパー
洗えるキッチンタオル

3回洗った後で左右に引っ張っても破れなかった
3回洗った後で左右に引っ張っても破れなかった

 洗って2~3回使えるキッチンタオル。ロール状に巻かれ、ミシン目で切り取れる。1枚の大きさは24×27.5センチで60枚使用可能。3回洗った後でも破れておらず、かなり耐久性があるように感じた。税込み220円。


食パンにも専用ケースが登場
食パンケース 1枚用

 食パン1枚を保存できるケース。ジッパーバッグと異なり、冷凍庫内で中身がつぶれにくく、立てて収納ができるのが特徴。フレンチトーストの調理に使用すれば、牛乳などが無駄になりにくい。一度に食べきれない分を保存でき、食品ロス削減が期待できる。税込み110円。


100均なのに1000円 高コスパのイヤホン
完全ワイヤレスイヤホン(TWS001)

 機器とBluetoothで接続し、音楽が聞けるワイヤレスイヤホン。両耳をつなぐワイヤーがなく、パーツが完全に独立。ケースが充電器になっている。1000円商品だが、10時間連続して再生できることを押し出し、コスパの高さで売れ行き好調。税込み1100円。


 便利なグッズを開発するだけでなく、人に薦めたくなる特徴を持たせる。情報の伝わり方まで考えて、商品をデザインする時代がきている。

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