1℃単位、1秒単位で火加減を制御して料理ができるハイテク卓上IH調理器が発売され、一部のプロ料理家の間で活用する動きが出てきた。正確な火入れが可能で、科学的な視点で料理を研究する昨今のトレンドにマッチしている点が支持されている。今後、料理好きの一般消費者の間でも人気を呼ぶ可能性がある。

プロデュース・オン・デマンドが2021年3月に発売した「Repro Ver.1.0」。基本セットの直販価格は10万7800円(税込み)。中央の本体と、右側にあるワイヤレス外部センサーをセットで使う。レシピはスマホやタブレットで検索し、作るものが決まったらワイヤレスで本体に送信する仕組みだ
プロデュース・オン・デマンドが2021年3月に発売した「Repro Ver.1.0」。基本セットの直販価格は10万7800円(税込み)。中央の本体と、右側にあるワイヤレス外部センサーをセットで使う。レシピはスマホやタブレットで検索し、作るものが決まったらワイヤレスで本体に送信する仕組みだ

 家庭用調理家電の世界に、絶妙な火加減を実現する卓上IH調理器が登場した。「Repro Ver.1.0」(以下、Repro)は、温度を1℃刻みで、時間を1秒刻みで制御できる。スマホで検索したレシピに従って、調理の各ステップごとに設定温度を自動的に調整する。正確な火入れが可能になり、焦げ付きや生煮えといった失敗が起こりにくい。

 飛びついたのは、正確な火加減によって味を追求したいプロのシェフたち。価格は10万7800円(税込み)と決して安くはないとあって、まだ一般消費者には手が届きにくい。ただ、長引くステイホーム生活を追い風に家庭で料理する一般消費者は増えている。こだわりの自炊派にも裾野が広がる可能性がある。

 Reproの外観は、一般的な1口IH調理器と大差なくシンプルだが、中身はハイテクの塊だ。最大の工夫が、付属するBluetooth対応のワイヤレス外部センサーにある。トップガラスに置いた鍋やフライパンの中の温度を、0.1℃単位で常時計測して本体にデータを送信するもので、これによりIHの出力を1ワット単位で微調整しながら水や油、食材表面が設定温度通りに維持されるよう制御している。

 対応温度は30~100℃で、測定誤差は±1℃をうたう。充電池を内蔵しているので上限温度は100℃だが、別売りのUSBで接続するタイプの有線センサーを購入すれば100℃以上の料理も可能になる。

付属のBluetooth対応のワイヤレス外部センサーによって、鍋やフライパンの中の温度を0.1℃単位で常時計測して、本体のIHの出力を1ワット単位で微調整できる
付属のBluetooth対応のワイヤレス外部センサーによって、鍋やフライパンの中の温度を0.1℃単位で常時計測して、本体のIHの出力を1ワット単位で微調整できる

 加えて「鍋プロファイル」という独自の仕組みも備える。アルミやステンレス、鉄、鋳鉄などメーカーや製品ごとに鍋やフライパンの材質は異なるが、それらの熱伝導率を記録したものが鍋プロファイル。スマホやタブレットで手持ちの鍋などを選んで本体に送信すると、火加減する際に登録されたデータを基にそれぞれで特有の熱伝導率に合わせて出力の最適化が可能になる。現在用意する鍋プロファイルは約130種類ある。

 手持ちの鍋などのプロファイルが用意されていない場合でも、素材や構造、容量、直径別の「汎用プロファイル」が用意されており、近いものの中から選べる。なお鍋については、外部センサーを使って水温などを測りながら専用プロファイルを手動で作成する「キャリブレーション」機能を使える。

 熱伝導率に起因するよく起こりがちな失敗の例が、フライパンで予熱した後、肉などを置くと温度が急激に下がる「温度ドロップ」だ。温度を戻すためにフルで加熱する必要があるが、熱伝導率の違いによって必要以上に熱が食材に入ってしまいやすい。例えばオムレツなどの卵料理では、表面がざらついた仕上がりになってしまう。

 鍋プロファイルを用意するReproの場合、鍋やフライパンの特性を踏まえた外部センサーによる出力調整により、食材に影響の少ない形で温度ドロップから復帰可能になる。つまり失敗が起こりにくい。

 料理によっては、食材に外部センサーを差し込めない煮物や、蓋をしたままにする煮込み、フライパンをあおるチャーハンといった焼き物など、外部センサーをセットしにくい場合がある。そこでReproでは、トップガラスの中央部に埋め込まれたセンサーでも、鍋やフライパンの底の温度を推測できる仕組みになっている。ここでも鍋プロファイルが活躍し、底の温度から実際に内側の水温や表面温度がどうなっているか予想して、狙い通りの温度に近づくように火加減を自動調整する。

約130種類ある鍋プロファイル。メーカーや製品ごとの熱伝導率の違いをアルゴリズムに反映する仕組みだ。写真は、鍋プロファイルを本体に転送している様子
約130種類ある鍋プロファイル。メーカーや製品ごとの熱伝導率の違いをアルゴリズムに反映する仕組みだ。写真は、鍋プロファイルを本体に転送している様子

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