日差しが強くなり、汗がべたつきにくくカジュアルに着こなせるTシャツへの注目度が高まっている。ドン・キホーテが2021年3月に発売した「速く乾きすぎるTシャツ」は、速乾性と着心地の両立を目指した商品。脱水して天日干しすると30分で乾き、シワもほぼ目立たない。なぜ両立できたのか、その秘密に迫った。
ディスカウントストア大手のドン・キホーテ(以下、ドンキ)は2021年3月、プライベートブランド(PB)のRESTORATIONから「速く乾きすぎるTシャツ」(7色展開、税込み1749円)を実店舗で発売した。ポリエステル100%で速乾性をうたい、ドンキが開発した既存のコットン100%のTシャツに比べて約2.5倍、ポリエステル100%のTシャツに比べて約1.8倍速く乾くという。
ドンキの主な客層である10~20代をターゲットに定め、最近トレンドのゆったりと大きめなワイドシルエットで、肩のラインが通常よりも丸みを帯びるドロップショルダーのデザイン性も取り入れた。ドンキの売りであるコストパフォーマンスの高さに加え、さらなる機能性も追求するよう進化している。
発売直後から想定の3倍強の売り上げを記録し、夏本番を前にしても好調を持続。依然として計画を上回る状況だという。通常のTシャツはまとめて1万枚を製造するケースが多いが、この商品は3万枚を用意。ドンキがいかに力を入れているかがうかがえる。
特徴は、速乾性と着心地という相反する要素を両立させたことにある。速乾性を重視するとインナーやスポーツウエアのように生地が薄い方が有利だが、カジュアルに着るためには厚さが足りない。素材に関しても、カジュアルで肌触りの良いコットンは、吸水性が高く乾きにくい。衣料用の化学繊維で最も一般的なポリエステルは、コットンに比べて乾きやすいが、肌触りが硬く着心地でコットンに劣る。速乾性と素材選びそれぞれに一長一短があった。
商品を企画したPB企画開発部の向剛史氏は、「表面の風合いを求めてコットンに近づけるほど乾かず、薄くしたらファッションアイテムとして成立しない。ポリエステルだけを使用し、いかにコットンらしさを出すかを考えた」と言う。
実際にどれほど速く乾くのか試してみた。Tシャツを洗濯機に入れ、脱水してから取り出すと、その段階でかなり乾いたような質感だったのには驚いた。そのままハンガーに掛けて天日干しすると、30分ほどで十分に着られる状態になった。40~50分かかっても速乾といえるが、それ以上の速さだった。
速乾性以外にも思わぬ発見があった。干しただけでほとんどシワにならず、アイロンがけが必要ないレベル。また、伸びやすい首元に戻りが良い素材を使用しているため、繰り返し洗ってもヨレにくい。
肌面は比較的なめらか。表面もコットンのように見え、普段使いしやすい。試しに、快晴の日にこのTシャツを着て2時間ほど散歩すると、汗をかいてもすぐ乾き、ベタついた感じがあまりしなかった。速乾性と着心地、どちらも十分といえそうだ。
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