変化の激しい今こそ、時代を映す現代アートに触れたい。今見るべき現代アートの美術展を、東京藝術大学大学院教授の長谷川祐子氏に聞いた。女性アーティストのパワーを感じられる「アナザーエナジー展」を筆頭に、注目の美術展が目白押しだ。
※日経トレンディ2021年1月号臨時増刊「2021年絶対に見逃せない美術展」の記事を再構成
ブラック・ライブズ・マターをはじめ、人種、ジェンダー、民族、宗教など、多様なアイデンティティーの不均衡を正そうとする運動が世界各地で広がっている。急激に変化する「今」への意識を高めるためにも、時代を映した現代アートと向き合ってみたい。
2021年に開催される現代アートの展覧会で、注目すべきものはどれか。東京芸術大学大学院教授で金沢21世紀美術館館長の長谷川祐子氏に聞いた。
「21年は女性のパワーを感じられる展覧会が目白押し。その筆頭が、森美術館で開催中の『アナザーエナジー展』です」(長谷川氏、以下同)
アナザーエナジー展では、1950年代から70年代にかけて活動を始めた女性アーティスト16人を紹介。彼女たちの出身は世界14カ国に及び、作品のジャンルも絵画、映像、彫刻、インスタレーションと多様性に富んでいる。
「20年以降は新型コロナウイルスの感染拡大があり、内省の時代に入ったと感じています。新しいものに目を向けるだけではなく、過去を振り返り、今という地点を確認する。それが人類に必要な一歩です。アナザーエナジー展の作品を通して、芸術は人々に何をもたらすかを考えてみてください」
会期:21年4月22日〜9月26日
「アナザーエナジー展:挑戦しつづける力 ─世界の女性アーティスト16人」で見られる作品
フィリダ・バーロウは、1944年、イギリスのニューカッスル・アポン・タインで生まれ、ロンドンで育った。2017年にベネチア・ビエンナーレ英国館代表になるなど、イギリスを代表する彫刻家だ。ポール、布、合板など安価な素材を使い、実験的で巨大なスケールの立体作品を制作している。
エテル・アドナンは、1925年、フランス占領下のベイルートに生まれた詩人、アーティスト。2012年、ドイツの芸術祭ドクメンタに参加している。クレーやカンディンスキーなどの抽象絵画に影響を受け、叙情的で複層的な色彩の絵画を制作。
アンナ・ボギギアンは、1946年、エジプト・カイロ生まれ。政治学、音楽や美術などを学び、現在は様々な地域に滞在して、各地の歴史、政治、社会状況のリサーチ結果を結びつけた作品を発表している。ドローイングを切り抜いた、紙人形劇の舞台のようなインスタレーションが特徴。
三島喜美代は、1932年、大阪府生まれ。具体美術協会の流れをくむ画家・三島茂司との出会いに影響を受け、抽象画、実験的なコラージュなどを制作し始める。巨大な陶で作られた新聞のオブジェや、ミカン箱などの作品で知られる。昨今、海外での注目度が高まる一人だ。
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