フレンチトーストやクリームパン、メロンパンをイメージしたアイスを、ガリガリ君でおなじみの赤城乳業やロッテ、オハヨー乳業が続々と発売した。アイスが小腹を満たす選択肢として認知され始め、女性が手軽にとる“一食”としての地位を確立しつつある。2021年5月に発売された3商品に注目した。
簡単に作れて朝食として人気の高いフレンチトースト。巣ごもり生活の中、自宅で作った人も多いのではないだろうか。あのフワッとした食感をアイスで再現したのが、赤城乳業(埼玉県深谷市)の「フレンチトースト風アイスバー」(税込み151円、2021年5月17日発売)だ。
同社が21年2月に発売した「かじるバターアイス」(現在は販売終了)が上半期にヒットしたこともあり、発売前からSNSで話題に。すでに一部の店舗で完売するところもあり、全国のスーパーやコンビニなどの販売情報をTwitterで共有する動きまで出ている。
赤城乳業によると、「フレンチトーストを作る人が増え、全世代から愛されるパンをアイスにできないかと考えたのが開発のきっかけ」と言う。
味を近づけるのはもちろんだが、フレンチトーストの焼き感も意識。アイスの側面はパンの耳をイメージして茶色くし、中央の黄色い部分にはパイ生地を混ぜ込み、トーストに近い食感を目指した。
実際にパッケージから取り出すと、2色のコントラストはフレンチトーストを想起させる。一口かじると、アイスの端はやや硬めだが、中央部のクリームはやわらかい。この食感差もトーストを意識しているのだろう。粒々なパイ生地や中央部のメープルソースが口の中で混ざり合い、味もまた本物に近いと感じた。
八天堂のクリームパンと雪見だいふくもコラボ
クリームパンで有名な八天堂(広島県三原市)とのコラボ商品を発売したのが、ロッテの「雪見だいふく」。カスタードアイスを餅で包み、やわらかいカスタードクリームを入れた「八天堂監修カスタードくりーむ味」(税込み198円)が、21年5月17日から全国のスーパーやコンビニなどに並んでいる。
雪見だいふくは1981年に発売し、今年で40周年を迎えた。長い歴史の中で、製パン業と本格的にコラボした初めての商品。市場へのインパクトは大きく、初週の出荷状況は前年を大きく超えて推移しているという。
「コラボのきっかけは、八天堂のクリームパンと雪見だいふくの丸いイメージが重なったこと。食べたときにとろっとした食感になるよう、何度も調整を重ねました」(ロッテ)。コロナ禍においては旅行や遠出がしにくく、自宅時間が増えてストレスを発散しづらい。そんな気持ちを癒やそうと開発されたものだ。
パンアイスの老舗が考えるヒットの理由とは
21年5月11日には、オハヨー乳業(岡山市)の「チョコチップメロンパンアイス」(税込み235円)がファミリーマート限定で発売。09年から定期的に発売する「メロンパンアイス」の新作で、根強いファンに支えられ、すでに各店舗の在庫を残すのみとなった。
パンをイメージしたアイスはなぜ増えているのか。オハヨー乳業は、「アイスにも小腹満たし需要が出てきたため」と分析する。アイスが朝食や間食の代替になっているというのだ。
それなら普通のパンを食べればいいと思うが、注目されているのがそのカロリーの低さだ。チョコチップメロンパンアイスは208キロカロリーなのに対し、ファミマが力を入れる「ファミマ・ザ・メロンパン」は403キロカロリー。およそ半分程度に抑えることができる。
前述のフレンチトースト風アイスバーは129キロカロリー、雪見だいふく八天堂監修カスタードくりーむ味に至っては1個88キロカロリーで、2個食べても200キロカロリーに満たない。本物のパンよりもカロリーが低ければ、アイスは有力な選択肢になる。実際、オハヨー乳業やロッテが狙うのはカロリーを気にする若い女性層だ。
また、「アイスの製造技術が上がり、パンの味を再現しやすくなったことも理由の一つ」(オハヨー乳業)。例えば、メロンパンアイスにチョコチップを付けると、チョコが硬くなって食べにくい。これまでの製造データからチョコの硬さを調整し、より本物の食感に近づけたという。フレンチトーストアイスの場合でも、焼き感を表現するためにパイ生地を入れた点が、企業の技術力の高さを示している。
こうした商品の購入者の多くがリピーターだ。まずは話題性で手に取ってもらい、おいしくてもう一度購入したくなる――。そうした循環がうまく回り始め、カップやモナカ、コーンといったアイスの定番に「菓子パン」が加わる日も近いだろう。

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