地方の中小企業が、都会の大企業で働く経験豊富な人に時間単位で仕事を依頼――。そんな人材シェアリングサービスを展開する注目企業がJOINSだ。リモートワークが当たり前になり、副業を含む働き方の多様化が進む中で、その存在感を高めている。独自のビジネスモデルが生まれた背景と、今後のサービスの展望を聞いた。
慢性的な人手不足に悩む地方の企業が、都会の大企業で働く経験豊富な人材に時間単位で仕事を依頼できる。JOINS(ジョインズ、東京・千代田)は地方企業に特化し、副業・兼業人材の紹介を行うスタートアップ企業。コロナ禍でリモートワークが普及し、地方企業と都会の人材、双方の副業ニーズが拡大する中で急成長している注目の存在だ。
創業者の猪尾愛隆氏は慶応義塾大学を卒業後、大手広告代理店の営業職を経て、クラウドファンディング企業に転職。12年間の在職中、日本各地の中小企業をサポートする様々なファンドを立ち上げた。
「広告代理店時代は利益目標がまずあり、『その達成に向け、売れる広告を創ってほしい』という都会の大企業が主な顧客。一方、前職で知り合った地方の老舗企業は、『地元の文化や風土を次代に引き継ぐため、適正な利益を確保する』との考えが根本にある。数代先を見据える経営者たちの心意気に憧れ、地方の企業を支えたいと思うようになりました」(猪尾氏。以下、発言者表記の無いコメントはすべて同じ)
地方企業と関わる中で知ったのが、スキルや経験を持つ人材の深刻な不足。経営者が魅力的な事業計画を思いついても、実行役の右腕がいないため、ファンドの設立や銀行からの融資に至らないケースに数多く行き当たった。
「当初は、資金さえ用意すれば都会の優秀な人材を雇えると思っていました。でも都会で高い収入を得ている人が、それをなげうって地方に移住・転職するのはハードルが高く、現実的ではないと分かりました」
解決策としてひらめいたのが、リモート副業だった。「本業の勤務時間外にテレワークで働くのなら、都会の人も挑戦しやすい。契約が長期化すれば地方の人々との交流が生まれ、結果的に2拠点生活や移住につながることも大いにあり得る。地方企業に、お金でなく人を届ける事業を展開しようと独立を決意しました」
現場ニーズとのミスマッチを痛感し、ビジネスモデルを変更
「移住したい都道府県ランキング」でトップを争い、地元の地銀に熱心な担当者がいた長野県限定で、2017年6月から試験的に事業を開始。当初、主に登録人材として着目したのは、中小企業診断士の資格を持つ、都会の大手企業の社員。「地方企業の業務を手掛けたい人が多い」と考えたからだ。
彼・彼女らの勉強会に足を運び、副業をしたいと登録に応じた100人のリストを地銀経由で長野県各地の中小企業に提示すると、「都会の優秀な大手企業の社員に働いてもらえるのか」と、次々と契約が決まった。
ところが契約が更新されず、数カ月で終了してしまうケースが続出。理由を探ろうと、猪尾氏は自ら「JOINS」に副業人材として登録し、長野県内のリゾート施設と契約した。そしてリモートワークをしつつ、他の事例の分析も進めると、「現場ニーズとの明らかなミスマッチ」が判明した。
当初、募集した案件の業務内容は「社内の課題の掘り起こしと改善策の明示」だった。ただ実際の現場では、課題も改善策の方向性も把握できているものの、日々の業務に追われて実行できていないケースが大半だった。「現場が求めていたのは、改善策のパワーポイント資料ではなく、課題解決のために手足になって泥臭く動いてくれる人だったのです」
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