社長の“暴走”を止めるバランス感覚もヒットを生む

 こうした商品を素早く企画できるのは、社長自らが動いて意思決定するためだ。関わる人が多い大手ではこうはいかない。商品の生産ラインが細かく分かれていることも有利に働き、途中で様々な素材を入れるといった試行錯誤が可能だ。「大手だと効率を求めて生産ラインを一本にしますが、うちは効率を目指していない。小回りが利くからこそ、こうした商品が作れるのです」

 消費者のニーズを捉えるため、三真では社長が自分の目で確かめる。新商品が出れば、千葉工場に併設された直営店で消費者の動きを調査。コンビニではすべての売り場を観察して売れ筋商品を調べ、暇があれば東京・渋谷で若者のはやりを追いかけている。

 こう書くとワンマン経営のように聞こえるが、社員の意見にも耳を傾ける。特に女性の意見は重要視する。女性陣が推した「ジェノベーゼOKAKI」(税込み95円)など絶対に売れないと思っていたが、コンビニで販売すると飛ぶように売れたためだ。また、パッケージに犬のお尻が描かれた「ペーターのうんこ。」は、営業部にコンプライアンス上の問題で猛反対され、泣く泣く直営店のみの販売に縮小した。社長の“暴走”を止めるパワーバランスもまた絶妙なのだ。

社員の意見が命運を分けた「ジェノベーゼOKAKI」(写真左)、「ペーターのうんこ。」(同右)
社員の意見が命運を分けた「ジェノベーゼOKAKI」(写真左)、「ペーターのうんこ。」(同右)

 トップ自らが開発をけん引し、他社とは徹底した差別化を図る――。言うはやすしだが、企業規模が大きくなればなるほど行うのは難しい。コンビニの来客数はコロナ禍で前年比1割減と落ち込み、いかに一目で商品を手に取らせ、リピート率を上げるかが重要な課題になっている。大手にはまねできないインパクトと味を兼ね備えた三真のおかきは、苦境を乗り越える答えの一つを示している。

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写真右の「ラッキー明太マヨ」は、母が子供を守っているイラスト。その後に発売した「しあわせマヨネーズ」には、敵から子供を守り、二人で帰る様子を描いた。パッケージのストーリーがつながるよう、遊び心を持って作られていた
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餅の中に黒ごまあんやラムレーズンが入った「モスクワ大福」シリーズ。冷凍され、30~40分自然解凍してから食べる。加藤社長が商品名をなかなか思いつかなかった唯一の商品で、結局は「寒いといえばモスクワだろ!」のイメージから名付けられた
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(写真/岩田 慶=fort)


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