ファミリーマートが2020年10月に発売した贅沢おむすびシリーズ「ごちむすび」が販売累計4000万個を突破し、爆発的にヒットしている。通常の1.5~2倍の価格帯のおにぎりは以前からあったが、消費者の目にとまりやすくしたことで一気にブレーク。高級路線のおにぎりにはセブン-イレブンやローソンも力を入れており、競争が熱くなっている。

21年3月16日に発売された「ほたてバター醤油」(写真左)と「炙りとろさば」(同右)。ごちむすびシリーズ全体で、店舗ごとに1日に約16個売れた計算だ
21年3月16日に発売された「ほたてバター醤油」(写真左)と「炙りとろさば」(同右)。ごちむすびシリーズ全体で、店舗ごとに1日に約16個売れた計算だ

 ファミリーマートの贅沢おむすびシリーズ「ごちむすび」の販売が累計4000万個を突破し、一般的なおにぎりの1.5~2倍の価格帯にもかかわらず、大きなヒットを見せている。2020年10月の発売からまだ5カ月ほど。日経トレンディの「2019年ヒット商品ベスト30」で18位に選出したローソンの「悪魔のおにぎり」が累計5600万個超(掲載当時)であったことからも、その数字の大きさがうかがえる。

 21年3月16日には、ごちむすびに3種類の新商品を追加。全国で「ほたてバター醤油」(税込み198円)と「炙りとろさば」(同168円)、関東限定で「生たらこ」(同198円)が棚に並ぶようになった。

 ごちむすびの特徴は、高級食材を具材に使用することだ。ほたてバター醤油は青森県の陸奥湾産ホタテを使い、炙りとろさばは宮城県で水揚げされた脂乗りのいいサバを採用する。米はお米ソムリエが開発した専用のブレンド米で、のりも瀬戸内海産の高品質なものを使う。

商品内容は大きく変わっていないのに、ごちむすびはなぜ売れた

 数々のおにぎりを食してきたコンビニ研究家の田矢信二氏に、新商品を試食してもらった。「ほたてバター醤油は、バター醤油がホタテのうまみを引き出している一品。かめばかむほどうまみがあふれ出てきます。炙りとろさばは、脂が乗ったサバの大きな切り身をぜいたくに使い、肉厚感があります。藻塩と塩こうじの二段熟成が生み出す『塩味』と『脂』の組み合わせが絶品です」(田矢氏)。

「ほたてバター醤油」の断面図。高級食材のホタテがぎっしりと詰まっていることが分かる
「ほたてバター醤油」の断面図。高級食材のホタテがぎっしりと詰まっていることが分かる

 おにぎりの高級路線は、ファミリーマートでは06年に始まっている。以前に扱っていた商品と現在のごちむすびとを比べて、値段や高級感、素材といったものに大きく変えた部分はないという。しかし、これまでは販売にごちむすびほどの勢いはなかった。ではなぜ今、売れているのか。

 ファミリーマートによると、3つの理由が考えられるという。「まず棚に2個程度だったアイテム数を3~5個に倍増したことで、消費者の目に付きやすくなりました。また、新型コロナウイルスの影響で、のりを自分で巻くおにぎりより、すでに巻かれているタイプの方が手の汚れが付きにくいとして選ばれやすい面があります。そして、ステイホーム生活の中で『ちょっとしたぜいたくがしたい』という需要にもマッチしたのではないでしょうか」(ファミリーマート)。

 ごちむすびを発売した20年10月から21年2月までのファミリーマートの月次営業実績を見ると、客数は前年同月比で10~14%程度減少したものの、客単価は5~10%程度上がっている。この数字からも、ごちむすびはコロナ禍のニーズをうまく捉えた商品と言える。

 他社も高級路線に力を入れる。セブン⁻イレブンは01年から販売する「こだわりおむすび」がロングセラーに。ローソンも19年に「金しゃりおにぎり」シリーズを発売し、20年11月にブランドを刷新。地域によって米の銘柄を変更し、北海道、東北地区などでは山形県の「雪若丸」、関東甲信地区などでは石川県の「ひゃくまん穀」のように従来品と差別化を図っている。

 コンビニがけん引するおにぎり市場。田矢氏は「今では約5000億円規模にまで成長した市場において、コンビニおにぎりは各社の企業努力が最も詰まった商品です。コンビニを毎日のように利用する消費者を飽きさせないようにするため、季節食材を使用した数量限定の高級おにぎりは、今後ますます増えていくでしょう」。

 昔からある定番商品でも、時代に合っていれば、消費者の目に付きやすくするだけでヒット商品になり得る。売り上げ減少が続くコンビニだが、攻めの姿勢が状況を打開する鍵になるかもしれない。

注)ほたてバター醤油の販売地域は北海道を除く。炙りとろさばは沖縄県では21年3月23日発売
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