大手ビールメーカーによるクラフトビール事業発足から約10年。クラフトビールの製造・開発や、東京・代官山などの直営店「スプリングバレーブルワリー」を展開してきたキリンビールが、新たなクラフトビール缶商品の全国流通に乗り出した。その狙いや開発秘話、味わいに迫った。

キリンビールが発売した新しいクラフトビール「SPRING VALLEY 豊潤<496>」
キリンビールが発売した新しいクラフトビール「SPRING VALLEY 豊潤<496>」

 2021年3月23日にキリンビールが缶商品として発売した新たなクラフトビールが、「SPRING VALLEY 豊潤<496>」だ。発売に当たって、リブランディングされたクラフトビールの「スプリングバレー」ブランド第1弾商品と位置付ける。SPRING VALLEY 豊潤<496>は、もともと販売していたIPL(インディア・ペール・ラガー)の「496」をベースに開発された新商品だ。

 11年のクラフトビール事業構想開始以来、キリンビールはクラフトビールの一般化につながる様々な取り組みをしてきた。14年には市場の活性化を目指して、「よなよなエール」で有名なヤッホーブルーイング(長野県軽井沢町)と業務資本提携を締結し、翌15年にはクラフトブルワリーとなる直営店「スプリングバレーブルワリー」を東京と横浜で開業。18年からは「Tap Marché(タップ・マルシェ)」という1台で4種類のビールが提供可能な小型ディスペンサーで取り扱ことにより、全国展開を始めた。タップ・マルシェでは同社のビール以外にも「常陸野ネストビール」の木内酒造や伊勢角屋麦酒、Far Yeast Brewingなどの商品も扱い、クラフトビールを提供する飲食店の増加に貢献した。

 SPRING VALLEY 豊潤<496>も、こうした歴史の上に発売された商品だ。クラフトビール事業に創設時から携わる、キリンビール事業創造部スプリングバレー担当の吉野桜子氏は、「少量生産で個性的なクラフトビールはたくさんあるが、そのまね事をしてもしょうがない。キリンビールとして、業界全体が盛り上がるような大きな取り組みをすべきだ」と話した上で、こう続ける。「クラフトビールを飲む人の裾野を広げることが大きな目標。そのために、クラフトビールらしい味わいながらも、後味はすっと消えるような、多くの人に親しまれる飲みやすさの両立を目指した」。

 一口にクラフトビールと言っても味わいは様々だが、典型例としてクラフトビールを代表するスタイルの一つ・IPA(インディア・ペール・エール)のような、ホップの苦みや香りがガツンと利いた味わいが挙げられる。大手ビールメーカーが販売するような、爽快で喉ごしが良くごくごく飲めるビールに慣れた人の中には、特にその苦みに抵抗を感じる人も少なくない。一方で、根強いIPAファンはその苦みにこそ魅力を感じている。最適なバランスを実現するハードルは高い。ホップの個性を押し出しながら飲みやすさも両立することは、壮大な矛盾の両立に対する挑戦でもある。

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