2度の延期を経て2021年3月18日に開業した、USJ「スーパー・ニンテンドー・ワールド」をいち早くリポート。USJ史上最高額となる600億円超を投じて開発した、「世界初の任天堂エリア」の実力とは。USJの年間パスポートを持つライターが、その仕掛けの狙いを探る。

お祝いモードのエントランス
お祝いモードのエントランス

 2021年3月18日、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)で「スーパー・ニンテンドー・ワールド」がついにオープンの日を迎えた。20年夏の東京五輪前の開業予定が新型コロナウイルスの影響で延期となり、21年2月4日のオープン予定も緊急事態宣言で再度延期に。そしてようやく、構想から6年という歳月を経て完成した新エリアが、満を持してのお披露目となった。

 最寄り駅のあるJRゆめ咲線(桜島線)とそれをつなぐ大阪環状線では、マリオやクッパなど人気キャラクターがあしらわれたラッピング列車が運行、USJの正門をくぐり抜けるとポールの旗にはマリオのキャラクターがずらり。待ちに待った新エリアの開業でパーク全体はお祝いムード一色だ。

 スーパー・ニンテンドー・ワールドは、USJと任天堂のクリエイティブチームが全面協力し、任天堂のゲーム「スーパーマリオ」の世界観を圧倒的なスケールで再現したエリア。スーパーマリオシリーズは全世界で3億本を売り上げ、元祖「スーパーマリオブラザーズ」は世界で最も売れたゲームとしてギネスに認定。インバウンド需要も取り込める、日本が誇る最強コンテンツの1つだ。任天堂のゲームの世界をテーマにした施設は、今後、アメリカやシンガポールのユニバーサル・スタジオでも展開する予定となっており、その世界第1号がUSJだ。

 敷地は、スーパーマリオの世界観を象徴するマウント・ビーンポール、クッパ城、ピーチ城をメインに構成。中には2つのライドアトラクションとショップ、レストランがある。今も行列が絶えないハリー・ポッターエリアの総工費450億円を上回る600億円超を注ぎ込み、USJで過去最大の投資額ということからも並々ならぬ意気込みが感じられる。

想像を超える、ニンテンドー世界観の再現

 期待に胸を膨らませて新エリアへ向かうと、マリオのゲームを象徴する大小の土管が。大人も子供もここではマリオさながら、片腕を上げて記念撮影する定番スポットになりそうだ。そして、土管をモチーフにした長いトンネルの中へ。このトンネルを抜けると、目の前にはゲームで見たマリオの世界が飛び込んでくる。暗い土管の先に明るく開けたマリオの空間が広がるときの、圧倒的なサプライズ感が演出されている。実際、思わず歓声を上げる人の姿が多く見られた。

土管に入って片腕を上げたくなる
土管に入って片腕を上げたくなる
土管トンネルを抜けると……
土管トンネルを抜けると……

 マリオの世界を再現したメインのマウント・ビーンポールは多層構造になっている。ジャンプしてコインが出てくるおなじみのハテナブロック、のそのそと歩くクリボー、ゆらゆら動くパックンフラワー、光を反射しながら回転するコインなど、キャラクターたちがゲームさながらにこの現実の世界で動いている。

 筆者はUSJの年間パスポート保持者で、パークには頻繁に足を運んでいる。USJはハリー・ポッターエリアでも知られるように世界観を極限まで追求するが、この新エリアの再現度の高さには度肝を抜かれた。

 しかも、ゲームという非現実世界とリアルとが不思議な融合を果たした異空間で、自分がバーチャルの世界に入り込んだような初めての感覚になった。「ゲームやファンをとことん愛する任天堂のこだわりに応え、それ以上のものを表すのに苦心した」(USJ運営会社のマーケティングコミュニケーション部長・山本歩氏)。その覚悟と思い入れは、この空間だけでも十分に伝わってくる。

パワーアップバンドを装着して“リアルマリオ”になれる

 このテーマパークの最大の売りは、“リアルマリオ”になれること。エリア内で購入できる「パワーアップバンド」と呼ばれるリストバンドを腕に装着すると、手持ちのスマホにダウンロードしたUSJ公式アプリと連係させられる。

 連係するとどうなるのか? エリア内にあるハテナブロックをマリオさながらに跳び上がってたたくと、アプリ内にコインがたまる仕組みとなっている。

ジャンプしてハテナブロックをたたくと、「チャリーン」とゲーム音が鳴り、ピカピカと光る。筆者自身は小学生時代のファミコン以降、すっかりマリオとご無沙汰だが、「あのブロックはこんな大きさだったのか」と思いを馳せた
ジャンプしてハテナブロックをたたくと、「チャリーン」とゲーム音が鳴り、ピカピカと光る。筆者自身は小学生時代のファミコン以降、すっかりマリオとご無沙汰だが、「あのブロックはこんな大きさだったのか」と思いを馳せた
パワーアップバンドとアプリを連係。アプリの画面上はもちろん、パーク内のモニターでも確認できる
パワーアップバンドとアプリを連係。アプリの画面上はもちろん、パーク内のモニターでも確認できる

 施設内にあるアトラクションはすべてパワーアップバンドと連動し、随所でコインを獲得できる。たまったコインはアプリや施設内のモニターで確認。全プレイヤーのランキングや、チームごとの結果も分かり、一緒に行った友達や家族とコインの数を競ったり、キャラクターのスタンプを集めたりすることができる。競争というゲームの醍醐味を、リアルの世界と連動して楽しめる仕掛けが施されているわけだ。

 アプリ内のマップではパワーアップバンドを持つ“仲間”や自分の位置も確認でき、ゲームの世界への没入感を一層高める。パワーアップバンドは有料(税込み3200円)だが、これがないと楽しさが半減するため、購入する人が増えそうだ。

 パワーアップバンドがあると、「パワーアップバンド・キーチャレンジ」にも参加できる。エリア内にある「鍵」のマークがあるアクティビティーに挑戦し、攻略すると“鍵”を獲得。この鍵を3つ集めるとボスバトル「クッパJr.ファイナルバトル」に挑める。これは、大型のスクリーンに投影された自身のシルエットで戦う最新鋭のゲーム。来訪者がパワーアップバンドを購入する動機付けの仕掛けが、色々と用意されているのだ。

パワーアップバンド・キーチャレンジは、「タイミング良く『POWブロック』をたたいてノコノコを倒す」「パックンフラワーが寝ている間に12個の目覚まし時計を止める」など、いずれも体を使ったアクティビティー
パワーアップバンド・キーチャレンジは、「タイミング良く『POWブロック』をたたいてノコノコを倒す」「パックンフラワーが寝ている間に12個の目覚まし時計を止める」など、いずれも体を使ったアクティビティー
3つの鍵をそろえてボスバトルに挑戦。クッパJr.の隠れ家へ突入し、スクリーン上で空から降ってくるボム兵に対して腕を振ってはじき飛ばしたり、左右から飛んでくるキラーをしゃがんで避けたりしながら、全身を使ってスクリーン上のクッパJr.と戦う。獲得したファイアフラワーを放つと熱風が吹き、臨場感もたっぷり
3つの鍵をそろえてボスバトルに挑戦。クッパJr.の隠れ家へ突入し、スクリーン上で空から降ってくるボム兵に対して腕を振ってはじき飛ばしたり、左右から飛んでくるキラーをしゃがんで避けたりしながら、全身を使ってスクリーン上のクッパJr.と戦う。獲得したファイアフラワーを放つと熱風が吹き、臨場感もたっぷり

 ゲームとリアルの世界を融合し、実際に体を使ってゲームの中の“一員”になれるという遊びは、これまでのテーマパークには無い画期的な試みだ。バーチャルの世界をリアルに体験できることで、ゲームの世界観はいっそう豊かに広がっていく。マリオの世界に興味が無かった人たちも、新エリアを通してマリオたちキャラクターに愛着を持つだろう。幅広い世代に任天堂のゲームの世界観やキャラクターを訴求するという効果もありそうだ。

AR技術を駆使したマリオカートでゲームの中の世界へ

 気になるライドアトラクションは2つ。目玉はクッパ城の中にある「マリオカート~クッパの挑戦状~」。これまで1億5000万本以上を売り上げた人気ゲーム「マリオカート」を再現したものだ。

マリオカート~クッパの挑戦状~
マリオカート~クッパの挑戦状~
クッパ城外観。この中に、マリオカートのライドアトラクションがある
クッパ城外観。この中に、マリオカートのライドアトラクションがある

 専用のマリオヘッドバンドにAR装置の付いたゴーグルセットを装着。4人乗りのライドに乗り込み、“リアルマリオ”になって駆け抜ける。AR技術を駆使したゴーグルにはプロジェクションマッピングや仮想現実の映像が映し出され、視点を変えるとその映像も変わるという最新のテクノロジーが活用されている。標的を攻略することで、またコインを獲得。ゲームの中でしか味わえなかったマリオカートを体感できる。

 もう一つは、パーク内で最も低い基準の身長86センチメートルから乗車可能のファミリー向けライド「ヨッシー・アドベンチャー」だ。

ヨッシー・アドベンチャー
ヨッシー・アドベンチャー
ヨッシー・アドベンチャーの入り口と、乗車中の景色
ヨッシー・アドベンチャーの入り口と、乗車中の景色

 山本氏は、「USJは比較的スリリングなアトラクションが多く、若い世代の比重が高かったが、新エリアでは等身大のマリオになれる体験を提供することで幅広い世代の人が思い切り楽しめる場所にしたい」と思いを語る。

 「新しいテクノロジーを融合し、新次元の楽しさを取り入れることでUSJとしてもワンランク上のステージの遊びを提供できた。東京ディズニーランドが“夢の国”なら、USJは“目覚めの国”。圧倒的な刺激を与えることで日本中を元気にしたい」(山本氏)

マーケティングコミュニケーション部長の山本歩氏
マーケティングコミュニケーション部長の山本歩氏
レストランもマリオの世界観。ゲームに登場するアイテムがあちこちにある
レストランもマリオの世界観。ゲームに登場するアイテムがあちこちにある

 21年で開業20周年となるUSJのブランドスローガンは「NO LIMIT!」。これまでの常識を超越し、限界を超えることで新たな遊びを提供することができるのか。この「スーパー・ニンテンドー・ワールド」が、パーク全体の起爆剤となりそうだ。

(写真/水野 浩志)