PCブラウザー&スマホアプリゲーム『刀剣乱舞-ONLINE-』が、今年1月に5周年を迎えた。PCブラウザー版は登録者200万人、スマホアプリ版は累計550万ダウンロードを突破した大人気ゲームだが、刀剣乱舞の影響力はそれだけにとどまらない。数多くのメディアミックス展開に成功し、美術界にも刀剣ブームを巻き起こした刀剣乱舞の次の挑戦を聞いた。

※日経トレンディ2020年10月号の記事を再構成

 実在する日本の刀剣をモチーフとした「刀剣男士」を育成し、部隊を編成して歴史を守るために敵と戦う刀剣育成シミュレーションゲーム、『刀剣乱舞-ONLINE-』。これが、美術界をも巻き込んだ大きなムーブメントを起こしている。

 『刀剣乱舞-ONLINE-』は、PC・スマートフォンゲームを展開するプラットフォーム「DMM GAMES」を運営するEXNOAと、パソコン用ゲームやキャラクターデザインを手がけるニトロプラスの共同製作によるゲームだ。PCブラウザー用ゲームとして、2015年1月14日にサービスが開始され、今年で5周年を迎えた。配信前に特設ページで情報公開されてすぐ、大きな話題となり、SNSで情報が拡散されてプレーヤーが殺到。用意されたサーバーが次々と収容人数上限に達した。16年3月1日には、スマホアプリ版『刀剣乱舞-ONLINE- Pocket』をリリース。事前登録者数は100万人を超えた。

5周年の今、新たに作られたオープニング映像
5周年の今、新たに作られたオープニング映像

 これほどの人気を誇る最も大きな理由は、「刀剣男士」という前代未聞の作りにある。刀剣男士とは、実在する(もしくは実在した)刀剣や伝承に登場する刀剣をモチーフとしたキャラクター。審神者と呼ばれるプレーヤーによって人の姿を与えられた付喪神ということになる。プレーヤーは刀剣男士と共に過去へ遡り、関ケ原や本能寺、桶狭間など、各時代の戦場で歴史修正主義者の率いる時間遡行軍と戦い、正しい歴史を守る。

刀剣男士の代表的存在「三日月宗近」
刀剣男士の代表的存在「三日月宗近」

 その刀剣乱舞がゲームのプレーヤーを超えて、広く知られる存在となったきっかけについて、ニトロプラス社長の小坂崇氣氏は「18年のNHK紅白歌合戦に、ミュージカル『刀剣乱舞』の19振りの刀剣男士たちが出場したことが大きかった」と言う。

 「刀剣男士たちが登場したとき、視聴率は40%を超え、紅白出場によって広く一般層にも認知されました。その熱が覚めやらぬ間に、年明けの実写映画『映画刀剣乱舞―継承―』が公開されてさらに盛り上がったのだと思います」(小坂氏)

多彩なメディアミックス戦略「並行世界」という考え方

 NHK紅白歌合戦に登場したのは、刀剣乱舞のメディアミックス展開の一つ、ミュージカル『刀剣乱舞』だった。刀剣乱舞は企画の段階からメディアミックス展開を想定。芝居に歌と踊りの表現を加えたミュージカル『刀剣乱舞』と、ストレートな演劇である舞台『刀剣乱舞』の2作品を、並行して別々のステージ作品として展開している。

 さらにテレビアニメは、刀剣男士たちのほのぼのとした日常を描く『刀剣乱舞―花丸―』と、本格的な戦闘シーンが話題の『活撃 刀剣乱舞』との2作品が展開されている。これらの作品は、それぞれ登場するキャラクターも異なり、ストーリーや時代などの設定も別の世界が描かれているのだ。

 この、珍しい「並行世界」的な考え方が成り立つ前提として、刀剣乱舞の世界にある「本丸」という考え方がある。本丸とは、プレーヤーの本拠地であり、資源を使い刀剣男士を顕現する「鍛刀」、傷ついた刀剣男士を癒やすための「手入」、刀剣男士たちが馬当番や畑当番を行う「内番」などをはじめいろいろな行動をすることができる。しかも、この本丸は単なる施設の名称ではなく、プレーヤー独自の考察や設定などを含めた様々な世界観を包括したニュアンスを持つとのこと。

刀剣乱舞のゲーム画面
刀剣乱舞のゲーム画面
戦闘シーン

 「プレーヤーの数だけ本丸があるのが刀剣乱舞の大きな特徴」と、小坂氏は言う。自分だけの本丸に集めた刀剣男士たちを育成し、隊を組んで戦いに挑む。本丸によって所属する刀剣男士が違えば、育成の度合いも異なるので、メディアミックスの世界を、それぞれの“とある本丸”でのできごととして楽しめるというわけだ。

 また、あまたのゲームに必須とされているメインストーリーがないのも特徴だ。

 「ストーリーを具体的に描かないのは、自分だけの本丸のイメージを膨らませる余地を残したかったから。この自由度の高さがメディアミックスの成功にもつながっていると思います。刀剣男士たちは人間の姿をしていますが、刀剣の付喪神的な存在です。その行動原理を人間味をもって思い描くことも、物として思い描くこともプレーヤーの自由。それぞれの解釈が生まれて、世界を広げることができるのです」(小坂氏)。

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