2015年創業のスタートアップ企業が「お茶のパーソナライズ」というユニークな事業を8月末からスタートさせている。第1段のお茶抽出機「teploティーポット」は4日間で初回出荷を売り切るなど、出足は順調。製品レビューをするとともに、開発元のLOAD&ROADにビジネス戦略を聞いた。

LOAD&ROADが20年8月に発売した「teploティーポット」(実勢価格2万5000円・税別)。別売りの「teploグラス」(写真左)は同1500円
LOAD&ROADが20年8月に発売した「teploティーポット」(実勢価格2万5000円・税別)。別売りの「teploグラス」(写真左)は同1500円

 2019年の総務省家計調査によれば、日本では1世帯当たり平均1万3948円分のお茶を消費している。これはコーヒーや炭酸飲料、果実・野菜ジュースよりもずっと多く、日本人はお茶好きだと言える。その内訳をみると、近年の茶の消費を支えているのは、ペットボトル緑茶に代表される「茶飲料」だ。逆に茶葉(特にリーフ緑茶)の消費額は横ばいか減りつつある。

 ペットボトルなどの茶飲料が好まれるのは、茶葉よりも手間が少ないからだ。急須に茶葉を入れてから湯を沸かして注ぐにはひと手間かかるし、湯の温度や抽出時間を間違えると苦みや雑味が生じておいしいお茶にならない。自分で入れてもおいしいお茶にならないなら、ホットのお茶もペットボトルでよいと考えるのは自然な流れだ。

 その状況を打破し、ひと手間かけるだけで誰もがおいしいお茶を入れられることを目指した製品が、LOAD&ROADの「teploティーポット」だ。茶こしと加熱機能が付いたティーポットとスマホアプリを組み合わせ、使用した茶葉に最適な温度と抽出時間でおいしいお茶を入れることができる自動抽出機になる。既存の海外製お茶入れマシンが、お茶を短時間で入れる方向を向いているのに対し、teploは「素早く80点のお茶が入る機械ではなく、10分ほどかかっても150点、200点のお茶が入る機械を作りたかった」(LOAD&ROADの河野辺和典社長)と、味の追求に力点を置く。

気分や体温によって、その日のお茶を「パーソナライズ」

 ではteploティーポットはどのような製品なのか。使い方と原理を簡単に見ていこう。

 teploでは、専用の茶葉のセットが用意されている。1つのパッケージには、300mLのお湯で入れる際にちょうど良い分量の茶葉が入っている。一方で、LOAD&ROADのサーバーにあるデータベースには、様々な種類の茶葉に最適なお湯の温度、抽出時間、抽出方法(茶こしを回転させる、揺らす、静止させる)のデータが登録されている。teploティーポットはこのデータをスマートフォンを通じて取り込む。こうすれば、失敗せずに最適な設定でお茶を入れられるというわけだ。

白い正方形のパッケージに茶葉が入っている。現在、紅茶や中国茶も含めれば約20種類のお茶が飲める(写真左)。利用時は、茶葉を取り出しteploティーポットの茶こしに入れる(写真右)
白い正方形のパッケージに茶葉が入っている。現在、紅茶や中国茶も含めれば約20種類のお茶が飲める(写真左)。利用時は、茶葉を取り出しteploティーポットの茶こしに入れる(写真右)
スマホアプリで茶葉を選択すると、抽出の温度や時間などの情報が表示される
スマホアプリで茶葉を選択すると、抽出の温度や時間などの情報が表示される

 茶葉の準備ができたらスマホアプリを起動し、セットした茶葉名を選択。そして「なりたい気分」を選び、スマホ画面の指示に従って本体の台座部分にあるセンサーでバイタル(体温、脈拍数)を読み取る。気分や体温の情報は、「リラックスする必要があるので少しぬるめに抽出」といった微調整に使う。パーソナライズのパターン数は非公表だが、抽出時間は30秒単位、温度は5度単位で調整しているという。お茶入れがうまい人は急須で入れるときに、「今日はちょっと濃いめ」などと無意識のうちに調整するのだが、そのコントロールが自動でできるというわけだ。機械ではあるが、かなり細やかに、こちらの状態に合わせたお茶が楽しめる。

「仕事に集中」「元気が欲しい」などの「なりたい気分」を入力する
「仕事に集中」「元気が欲しい」などの「なりたい気分」を入力する
アプリに「センサーを使う」と表示されたら指を置くと体温などを計測。この内容により抽出温度などを微調整する
アプリに「センサーを使う」と表示されたら指を置くと体温などを計測。この内容により抽出温度などを微調整する

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