スマホゲームの『Fate/Grand Order』が5周年を機に仕掛けたのは、47都道府県それぞれ違うイラストを使った、地方新聞の全面広告だった（詳細は「前代未聞！『FGO』が47都道府県の新聞広告を作った狙い　前編」）。新聞社が「過去これほどの問い合わせがあったことはない」と驚いた反響とはどんなものだったか。また、『FGO』が仕掛けた他の5周年の取り組みもレポートする。

※日経トレンディ2020年10月号の記事を再構成

熊本県の新聞広告に採用されたサーヴァントは天草四郎

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　この盛り上がりの影響を肌で感じたのは、広告を掲載した地方新聞だ。

　北海道新聞社 東京支社営業局によると、広告掲載当日の2020年6月13日には約3500部売れ、約1カ月後の7月20日に完売し、最終的な販売部数は約5700部に達した。

48種の広告を求めて地方新聞社に注文が殺到

　当時、『Fate/Grand Order』（以下、『FGO』）を知らない社員が多かったが、先に掲載していた他の地方新聞各社の読者反響の大きさを聞いて、対策が必要だと察知した。既存の販売サイトで事前予約購入受付を開始。すると、広告掲載前から注文予約が入り、当日は朝4時ごろからネット注文が殺到。北海道新聞は通常、定期購読している読者の男女比はやや男性が多いが、今回の購入者数は女性が多く、87％を占めていたという。

　読者からは、「新聞って思った以上に大きい、このサイズのイラストはなかなかないからうれしい」「広告の背景になった富良野に聖地巡礼したい」という声が寄せられた。同新聞の担当者は「富良野という土地の魅力を、広告を通じて伝えてもらえた。新型コロナウイルスが落ち着いた後には富良野を訪れる人が増え、北海道の魅力を感じてもらえる機会が少しでも増えればとてもうれしい」と言う。

　福井新聞社も、前例にないほどの部数が売れ、中には一人で30部購入する猛者もいたと言う。同社営業統括本部の担当者によると「掲載後3日間で1000件を超える申し込みや問い合わせがあり、最終的には約1800部売れた。過去これほどまでの問い合わせや販売数を記録したことはない」と、驚きを隠せない様子だ。ホームページにバックナンバー購入フォームはあったため、購入者の半数以上はそこからの申し込みだったが、電話の問い合わせも非常に多く、掲載から3日程度は担当部署が総出で対応していたという。

　「新聞広告の価値の再認識にもつながったと思う。普段新聞を購読していない若年層との接点づくりは新聞業界全体が苦労しているところだが、若い人々が新聞を手にするきっかけにもなった」（同担当者）と語っている。

　「今回の取り組みで、地方から感謝状などを頂いた。中には、新聞広告がきっかけで何か一緒にできないかという問い合わせなども来ているので、今後ビジネスにつながることももちろんあると思っている」と渡邊氏は言う。

　『FGO』の誕生当時からの責任者、ディライトワークス 第2制作部 FGOスタジオ スタジオ長の石倉正啓氏は「計48広告を並べてみると、サーヴァントたちが全国各地へ修学旅行に行った感じがある。地方含めて移動できない中で、盛り上げられるビジュアルが作れたのではないか」と言う。発案当初は写真とイラストがうまく合うのか不安だったという石倉氏も、イラストが力作ぞろいで、写真と見事に融合しており、感激したという。

　「東京中心になっている発信プロセスが、地方で展開できたのは新しい。地方と一緒に何か組んでいくということも考えらえる」と、同じく5年前から『FGO』に関わってきた、アニプレックス マーケティンググループ 宣伝部4課課長の金沢利幸氏は言う。

秋田県

「おかあさんは、いないかー！！」

●サーヴァント：ジャック・ザ・リッパー●スポット：男鹿のナマハゲ●イラストレーター：近衛乙嗣　

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本来は脅かされる側の少女となまはげという組み合わせが意表を突く。キャラクターの持つおけは極力リアルに 近づけて描かれている。レアリティ★5のアサシンクラスのサーヴァント

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熊本県

「心地よい熱さです。信仰はこのような場所でこそ篤くなりましょう」

●サーヴァント：天草四郎●スポット：阿蘇カルデラ●イラストレーター：近衛乙嗣　

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現熊本県上天草市で生まれたという説もあり、地元にゆかりのあるサーヴァントが選ばれた。レアリティ★5でルーラークラスのサーヴァント

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