フジ医療器(大阪市中央区)が2020年9月1日に発売した「チョイ寝エアーピロー」は、オフィス机での仮眠を想定した昼寝用枕。マッサージチェアを作るノウハウを生かしているという。布団まで行かなくてもその場で“チョイ寝”ができるので、在宅ワーカーにも受けそうだ。

「チョイ寝エアーピロー」のサイズは幅約34×奥行き約26×高さ約15cmで、重量は約1.0kg。充電式なので休憩室などに持ち込んで使うこともできる。ストラップ付き。希望小売価格は税別1万4800円
「チョイ寝エアーピロー」のサイズは幅約34×奥行き約26×高さ約15cmで、重量は約1.0kg。充電式なので休憩室などに持ち込んで使うこともできる。ストラップ付き。希望小売価格は税別1万4800円

 厚生労働省が発表した「健康づくりのための睡眠指針 2014」には「夜間に必要な睡眠時間を確保できなかった場合には、昼間の仮眠が、その後の覚醒レベルを上げ作業能率の改善を図ることに役立つ可能性がある」との記述がある。実際、海外では米グーグルやナイキ、国内では三菱地所やGMOインターネットグループなど、生産性向上のために勤務時間中の「仮眠制度」を導入するところも出てきている。

 マッサージチェアメーカーとして知られるフジ医療器が実施した「第7回 睡眠に関する調査」からは、52.3%が理想の睡眠時間を8時間としていることが分かった。にもかかわらず、平日に6時間以下の睡眠しかとれていない人が59%もいる。ランチの後に猛烈な睡魔に襲われ、ビジネスバッグを枕代わりに仮眠をとった経験があるのは筆者だけではないだろう。

2019年12月にフジ医療器が20歳以上の男女5571人を対象に実施した「第7回 睡眠に関する調査」では、睡眠に不満がある人が93.8%。60%近くが6時間以下の睡眠しかとれていない(画像提供/フジ医療器)
2019年12月にフジ医療器が20歳以上の男女5571人を対象に実施した「第7回 睡眠に関する調査」では、睡眠に不満がある人が93.8%。60%近くが6時間以下の睡眠しかとれていない(画像提供/フジ医療器)

好みの高さに調節可能、サイレントアラームも搭載

 「ランチの後にちょっとだけ睡眠をとりたい」というニーズを狙って開発されたのが「チョイ寝エアーピロー」だ。昼寝用の枕は以前からあるが、自分で空気を吹き込む必要がなく、左右別々に5段階で高さを調節できるのが一般的なエアクッション枕との大きな違い。エアクッション枕の場合、空気が足りないとたるんでしまうので、高さの調節は難しい。

 また、エアバッグを膨らませるだけでなく、膨らんだ状態を維持する機能にもフジ医療器の技術が生かされている。同社は1995年に初めてエアバッグ付きマッサージチェアを開発したメーカーなのだ。

 左右別々に高さが調節できるのは、枕の下に腕を通して横向きに寝るときのため。フジ医療器 企画部 部長の水口隆司氏は「オフィスの机で仮眠をとるとき、高さが合わない、いい姿勢がとれないという不満を解消する機能・形状を考えた」と話す。

枕の左右にエアバッグが内蔵されており、左右のエアバッグに空気が入ると中央部分が少し沈み込む
枕の左右にエアバッグが内蔵されており、左右のエアバッグに空気が入ると中央部分が少し沈み込む
基本的な使い方となる、正面からうつぶせ寝するスタイルはフィット感が高い。腕を通す使い方は枕が浮いてしまうので少し窮屈な印象
基本的な使い方となる、正面からうつぶせ寝するスタイルはフィット感が高い。腕を通す使い方は枕が浮いてしまうので少し窮屈な印象

 チョイ寝エアーピローのもう1つの特徴が、枕が動いて目を覚まさせる「サイレントアラーム機能」だ。この機能は、その名の通りアラーム音を鳴らすことなく、枕の左右がゆっくりと上下することで目覚めさせてくれるもの。アラーム音で周囲の目を引きたくないと考える人には“うれしい配慮”と言える。

 チョイ寝エアーピローは最長30分のタイマーを備えており、セットした時間の40秒前になると「プシュー」とかすかな音を立てて左右のエアバッグの空気が抜ける。その後、左、右の順に枕が盛り上がり、再びゆっくりと空気が抜けて電源が切れる。

 フジ医療器 企画部 グループ長の坂口修一氏によれば「どういった高さ、タイミングで上下させれば快適に目覚めるか、何度も実験を繰り返した」とのこと。枕が細かく振動して目覚めさせる方法も考えられるところだが、それでは振動音で周囲の注目を浴びそうだし、そもそも気持ち良く起きられる気がしない。

 枕に頭を付けた状態では、空気を抜くときの排気音も膨らませるときの駆動音も割と大きめに聞こえるのだが、周囲の人は気にならないだろう。その分、とても優しい起こし方なので眠りが深いと目覚めない可能性もある。目覚めを確認するまで上下運動を繰り返す仕様にしてほしかったところだ。爆睡してしまいそうなときは、念のために目覚ましもセットしておいたほうがいいかもしれない。

チョイ寝エアーピローの操作パネル。「L」「R」で左右のエアバッグを選択し、「+」「-」で高さを調節する。最長30分のタイマーもセット可能。バッテリー残量はパネル左上のランプで分かる。赤色になったら要充電だ(写真提供/フジ医療器)
チョイ寝エアーピローの操作パネル。「L」「R」で左右のエアバッグを選択し、「+」「-」で高さを調節する。最長30分のタイマーもセット可能。バッテリー残量はパネル左上のランプで分かる。赤色になったら要充電だ(写真提供/フジ医療器)

トップダウンでの販売が理想、課題はカバーの洗濯表示

 業務の効率アップにつながるとはいえ、仮眠制度を導入していない会社でチョイ寝エアーピローを使うのは抵抗があるかもしれない。フジ医療器では通販番組やメディアへの露出で認知向上を目指すとしているが、次の一手として狙っているのが「企業レベルでの導入」だ。同社では2017年から企業の福利厚生用にマッサージチェアなどをオファーしており、すでに100社以上の導入実績がある。

 水口氏は「マッサージチェアだけでなく、チョイ寝エアーピローも福利厚生の一環として導入してもらえる可能性がある」と言う。会社として導入することで、気兼ねなくオフィスの机で仮眠がとれる。特に新型コロナウイルス感染症の影響で仮眠用リクライニングチェアなどの“共用”が難しい現状では、個人で使うチョイ寝エアーピローに価値を感じる企業もありそうだ。フジ医療器では睡眠不足を感じている働き世代をターゲットに、年間2000台の販売を目指しているとのこと。

 一般的な昼寝用枕が2000~5000円程度で販売されていることと比較すると、税別1万4800円という希望小売価格はやや高い気もするが、高さ調節、サイレントアラームといった機能を考えれば納得はいく。坂口氏は「チョイ寝エアーピローは長く使える。一般的な昼寝用枕がヘタって買い換えることを考えれば割安」と説明する。

 気になったのは頭を乗せる本体カバーに「洗濯表示」がないこと。顔に跡が残らないよう柔らかくて肌触りのいい生地を採用したとのことだが、汚れやすいパーツだけに洗えるようにしてほしかった。机でうつぶせ寝をしたときに、よだれを垂らしたことのある人も少なくないはずだ。

 これについて水口氏は「洗濯表示を付けるには、さまざまなテストを実施する必要がある。洗濯表示については今後の課題としたい」と答えた。どうしても汚れが落ちないときのために、別売りの本体カバーも用意しているという。

 取扱説明書には本体・本体カバーの手入れについて「汚れは乾いたやわらかい布でから拭きをする」との記載があるものの、カバーに関しては洗濯表示がないだけで、洗濯できないわけではないようだ。試しに自己責任でタオルなどと一緒に洗濯してみたが、縮んだり色落ちしたりすることはなかった。

本体カバーは面ファスナー式なので簡単に取り外せる。裏側にはクッション性を増すためにハンカチタオルなどを入れるポケットが付いている
本体カバーは面ファスナー式なので簡単に取り外せる。裏側にはクッション性を増すためにハンカチタオルなどを入れるポケットが付いている
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