山崎金属工業/カレー賢人
金属洋食器メーカー、山崎金属工業(新潟県燕市)の「カレー賢人」は、カレーを食べるためだけに開発した専用スプーンだ。2017年7月に発売するや人気に火がつき、3カ月で1万本を売り上げるヒット商品となった。安いスプーンなら100円ショップでも買えるが、カレー賢人は1本1250円(税別)という高価格。にもかかわらず人気に生産が追いつかず、18年3月にはやむなく販売を一時休止するほどだった。
カレー賢人には「サクー」と「キャリ」の2つのモデルがある。ユニークなのは左右非対称のサクーの方で、全体の6〜7割の売り上げを占める。一般的なスプーンでは尖っている先端が、サクーでは斜めの緩いカーブを描いているのが大きな特徴だ。この先端を使って、カレーの大きな具材を名前通りサクッと「割く」ことが容易になるという。さらに、スプーンの先端と皿が接触する部分が一般的なスプーンよりも長くなるので、皿に残った米粒やルーをすくいやすい。この新しいデザインを生みだしたのは、1人の若手社員による“カレーの聖地巡礼の旅”だった。
開発が始まったのは15年。金属洋食器の老舗として高級路線を歩んできた同社だが、近年は主力の販売先である欧米の高級百貨店向けの売り上げが伸び悩んでいたという。そこで独創的な商品を開発し、新しい市場開拓に挑戦した。それがカレーだった。カレーは“国民食”といわれるほど日本人に親しまれ、さらにスプーンを連想しやすいメニューであることが、ターゲットに選ばれた理由。開発を担当した国内営業部の中村雅行・係長が向かったのは、カレーの名店がひしめく激戦区、東京・神田神保町だった。「東京出張のときはもとより、大阪や名古屋出張でも一旦東京で降りて神保町に行く。毎月1〜2回のペースで通っていた」(中村係長)。
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