第二部「アリババ、京東集団……中国の最強データ活用企業の新成長戦略」の6回目。アリババグループのデータ・ドリブン戦略の中核を担うのは、傘下のアント・フィナンシャルサービスグループが運営するスマートフォン決済アプリ「支付宝(アリペイ)」だ。その実力と特徴、課題に迫った。

2018年1月に4万店を突破するなど、中国からの訪日観光客を目当てに、日本でもアリペイを利用できる小売店の数は増えている。利用客は、自身のスマホでQRコードを表示して店頭の端末で読み取ってもらうか、店頭のQRコードを自身のスマホでスキャンすることで、簡単に決済ができる。17年初めの利用可能店舗は約2万2000店だったから、1年で約2倍に急増した。
アリペイ対応の小売店が日本でこれほど急速に増えている理由はただ一つ。中国からの訪日観光客の大半が、店頭でアリペイや、競合するテンセントが運営するスマホ決済アプリ「微信支付(ウィーチャットペイ)」を利用して決済したがるからに他ならない。彼ら彼女らを店舗に呼び込むには、中国のアプリ決済市場を二分するアリペイやウィーチャットペイに対応するのが、日本でも必須条件になりつつあるのだ。
中国人の間では、スマホ決済アプリはそれほど浸透している。中国人民銀行の統計によれば、中国におけるスマホ決済の取引回数は、16年の257億回から17年には376億回に増えた。46.3%も増えた計算で、それだけ中国人の間でスマホ決済を利用する機会が増えているのだ。
実際、街中で生活するうえで、現金を使うことはもうほとんどない。百貨店やコンビニエンスストア、飲食店などはもちろん、昔ながらの生鮮品市場や屋台でも、スマホ決済が当たり前。水道料金や電気料金といった公共料金の決済も可能。それどころかアリペイの場合、アプリを通して金融資産に投資したり、保険に加入して保険金を支払ったりすることさえできる。アント・フィナンシャルサービスグループ国際広報部のヤン・ジンユン シニア・マネージャーが、「アリペイは日常生活でカネと関わる分野は、ほぼすべてカバーしている」と豪語するほど。中国消費市場のキャッシュレス化を推し進め、社会インフラになったといっても過言ではない。
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