第二部「アリババ、京東集団……中国の最強データ活用企業の新成長戦略」の5回目。新小売戦略を掲げ、リアル店の事業領域に次々進出してきた阿里巴巴集団(アリババグループ)は今年、家具・インテリア販売大手「居然之家(イージーホーム)」に資本参加した。そのイージーホームを新小売店に衣替えする際、モデルになると噂されているのが、アリババが一足先に展開している家具・インテリア雑貨を扱うリアル実験店舗「家時代(ホームタイムス)」。そこで今回は、ホームタイムスで今どんな実験が進められているのかを追い、併せて「主に個人経営のリアル小売店を新小売店に変革するプロジェクト」も取り上げて、アリババが目指す新小売店の今を追った。

アリババグループが買収した百貨店大手、銀泰商業の傘下にある杭州市内の大規模百貨店──。その中の一角に、アリババがホームタイムスの実験店を開業した。昨年9月のことだ。最大の狙いは、新小売店としてリアル店とECをスムーズに連携させ、顧客の利便性を引き上げること。どんな工夫が施されているのか。
こぎれいな店内は、入口から入って手前に食器、その奥にインテリア雑貨、さらに奥に大きめの寝具などが並ぶ。目立つのは、店内の複数箇所に、タッチパネル式の大型ディスプレーが備えられていることと、商品の値札がすべて電子表示式であることだ。

大型ディスプレーに触れると、机や椅子、戸棚といった大型家具が、実際の生活シーンの中に配置されたような画像が現れる。来店客は画面にタッチすることで、家具の配置を動かしたり、色やサイズを変えたりして、自分のイメージと合っているかどうかを具体的に確かめることができる。ただ、画面内に現れる家具やインテリア雑貨は、必ずしも店に在庫として置かれていない。店にない商品が欲しい場合は、ディスプレー画面上でECサイト「天猫(Tモール)」上のホームタイムスのECサイトに移動し、そこで注文できる仕組みになっている。


値札が電子表示式で統一されているのには、2つの理由がある。初期投資は必要になるが、長い目で見れば、店員が値札をいちいち差し替える手間を省ける。それともう1つ。第二部第2回で取り上げたOtoOスーパー「盒馬鮮生」と同じく、ECサイトと同一の価格を表示するためだ。
ECサイトの側でも、リアル店の側でも、競合他社の値付けなどを参考にしながら、商品の価格はこまめに動かしたいもの。だが、リアル店の店頭価格とECサイトの価格に大きな乖離があっては、両者を見比べるような顧客が、一般的に価格が高めになるリアル店から離れてしまう。そこで、電子表示式の値札を導入し、ECサイトとリアル店の価格が同じになるように、専任担当者が日々調整を図っているというわけだ。
来店した顧客は、欲しい商品が決まればその商品をレジまで持って行き、商品に付けられたRFIDチップをスキャンするだけ。スマートフォン決済アプリ「支付宝(アリペイ)」で決済すれば、そのまま支払いが済んでしまう。
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