第二部「アリババ、京東集団……中国の最強データ活用企業の新成長戦略」の2回目。阿里巴巴集団(アリババグループ)の創業者であるジャック・マー会長が打ち出した「新小売(ニューリテール)」戦略を最もよく体現するとされ、既に中国で一定の地歩を築きつつあるオンラインとオフラインをシームレスにつなげた店舗「盒馬鮮生(ファーマーションシェン)」を取り上げる。「スーパー」「レストラン」「(EC向け)倉庫」「(EC向け)物流拠点」という4つの性格を併せ持つ最新の店舗が、顧客から強く支持される理由をひもとく。

2016年1月に上海市に1号店を開業し、同年3月にアリババが子会社化してから本格的に中国の主要都市に展開し始めたO2O(オンラインtoオフライン)店舗「盒馬鮮生(ファーマーションシェン)」──。その特徴は、単なる食品中心の「スーパー」にとどまらず、「レストラン」「(EC向け)倉庫」「(EC向け)物流拠点」という4つの性格を併せ持つことで、店舗を中心に半径3km以内の商圏で、いわば「人々の生活の中心のポジションを得る」(アリババグループ コーポレートアフェアーズの徐君宣ディレクター)ことにある(写真1)。
半径3km以内の想定ユーザーから支持されるため、盒馬鮮生が力を入れるのは、商品の品ぞろえとその鮮度である。世界中から商品を仕入れており、かつバイヤーが生産者から直接買い付けた産地直送品の割合を高めている。「品ぞろえの50%以上が海外から仕入れたもの」(盒馬鮮生杭州市解百店の陳礼肸店長)だ。さらに、来店客が陳列されている商品の値札に示されているバーコードをスマートフォンで読み込めば、産地や含まれている栄養素といった、より詳細な情報がスマホアプリの画面上に表示される(写真2)。

とりわけ、従来の中国のスーパーが力を入れてこなかった「海鮮」の品ぞろえに力を入れた。具体的には、カニ、ザリガニ、あわび、貝、魚といった海鮮物、それも高級品を、独自の仕入れルートを構築して安価で仕入れ、店内に巨大ないけすを作ってそろえている(写真3)。いけすの大きさは、例えば杭州市や上海市の店舗では大きく、店の入り口近くにある一方、北京市では小さく、店の奥に位置するというように店舗の立地によって異なるが、こうして海鮮の品ぞろえに力を入れ、「盒馬鮮生=海鮮がそろう」というイメージを作り上げるのに成功した。

例えば、他のスーパーなら、扱っていても1匹2000元(約3万4000円)するロシア産のカニは、盒馬鮮生では700元(約1万2000円)で販売している。「昨年9月28日に全店でこのカニをアピールしたところ、1日で合計1万匹以上が売れた」(陳氏)という。
また「帝皇鮮」という独自ブランド商品も展開している。これはバイヤーが世界中の生産者から直接買い付けてきた商品で、例えばニュージーランドの漁師から買い付け、急速冷凍技術で冷凍し、中国まで輸送してきたタラの加工品などが店頭に並んでいる(写真4)。

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