モビリティ革命「MaaS(Mobility as a Service)」の実像に迫る特集の19回目。「MaaSとは何か?」というそもそも論に立ち返り、MaaSの統合度による5段階のレベル分けを紹介した前回に続き、日本総合研究所創発戦略センターの井上岳一シニアマネジャーによる寄稿。今回は、日本におけるMaaSオペレーターの座を手にするプレーヤーは誰か、その核心に迫る。

あらゆる交通モードを統合し、最適な交通バランスを生み出すMaaS。日本で実現する道筋は?
あらゆる交通モードを統合し、最適な交通バランスを生み出すMaaS。日本で実現する道筋は?

 そもそもMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)で言うところのMobilityとは何か。英和辞書を引けば、「可動性」「移動性」「流動性」と出てくる。これでは意味が分からないので英英辞典(Oxford)を引くと、“The ability to move or be moved freely and easily.”とあるから、移動できる能力、あるいは自在に移動できる状態にあることを意味するということが分かる。あくまでも動く側の視点で移動を捉えた言葉がMobilityであるのに対し、運ぶ側の視点で捉えた言葉がTransportだ(Transportは通常、「輸送」「運送」「交通機関」と訳される)。移動を、動く側の視点で見るか、運ぶ側の視点で見るかが、MobilityとTransportという言葉の違いとなって表れる。Mobilityはユーザー(需要家)目線、Transportはサービス提供者(供給側)目線と言い換えてもいいだろう。

 需要サイドと供給サイドがある場合、たいてい、そこにはズレが生じる。経済学の理論に従えば、需要と供給は価格メカニズムの導入によって完全にバランスされるが、現実の世界ではそんなにうまくいくことはない。需給調整は、官民を問わず、永遠のテーマである。

 自動車(Automobile)は、Auto (自分自身で)+ mobile(動ける)、つまり、「自分自身のモビリティ」を原義とする。この「自分自身のモビリティ」が登場して以来、移動需要に関して、これを自己責任で満たすか(=自家用車の購入・利用)、公共サービスとして満たすか(=公共交通の整備)という構図ができた。公共交通には、大量輸送向け(バス、鉄道)と、個別輸送向け(タクシー)があり、「自分自身のモビリティ」には徒歩・自転車もあるから、結局、自家用車、バス・鉄道、タクシー、徒歩・自転車をどう使い分けるかが、個人にとってのモビリティのテーマとなるし、その最適バランスを考えるのが、交通政策(Polity of Transports)にとってのテーマとなるのである。

日本は自家用車依存から抜け出せるか?

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