モビリティ革命「MaaS(Mobility as a Service)」の実像に迫る特集の17回目。これまで自動車メーカーや鉄道会社など、個別プレーヤーのMaaSに向けた取り組みを紹介してきたが、今回はより大局的な視点に立ち、MaaSが社会に与えるインパクトを考察する。3000億円に迫る巨額投資を集め、米国で進むスマートシティの取り組みと、MaaSの関係とは?
 都市・交通のシンクタンクである計量計画研究所理事で、将来のモビリティビジョンを描くスペシャリスト、牧村和彦氏による寄稿。

米国オハイオ州のコロンバス市では、まちづくりと交通計画が一体となったスマートシティ化が進められている(出典:US Department of Transportation)
米国オハイオ州のコロンバス市では、まちづくりと交通計画が一体となったスマートシティ化が進められている(出典:US Department of Transportation)

 グーグルやアップルがスマートシティの構想を次々に打ち出している。2017年10月、グーグルの親会社であるアルファベットが、傘下のサイドウォークラボを通じてカナダ・トロントにスマートシティの建設を表明したのは記憶に新しい。既にニューヨークの電話ボックスがいつの間にかサイネージに変わり、人流や気象データなど、さまざまな情報をサイドウォークラボが収集している。米国の都市を歩けば、至る所に人流センサーが配置され、公共交通による移動、タクシーによる移動、バイクシェアリングによる移動など、人のビッグデータから都市の最適化が進められている。

 全米では今、何が起こっているのだろうか? 15年から政府を挙げて取り組まれている「スマートシティ・チャレンジ」に、そのヒントがあると筆者は考えている。モビリティ革命とスマートシティは別の事象ではない。モビリティ革命は目的ではなく手段である。米国で進められているスマートシティの取り組みを通して、モビリティ革命の地殻変動をひも解く。

スマートシティこそMaaSの本丸?

 スマートシティという言葉を聞いて、エネルギーや環境に配慮した都市開発を思い浮かべる人が多いのではないだろうか? 米国では、モビリティ革命の本丸は都市への実装と位置付け、政府、民間、大学が一丸となって、地域が抱える都市および交通の問題に取り組んでいる。生活の質の改善、通勤の利便性、都市の持続可能性の向上を目指して、ICT(情報通信技術)などを活用する都市をスマートシティと位置付けている。

 15年9月14日、当時のバラク・オバマ米大統領が、2年間で総額2億4000万ドル(約260億円)の「スマートシティ・イニシアチブ」を発表し、同じ年の12月には、米交通省(DOT)が「スマートシティ・チャレンジ(Smart City Challenge)」と呼ばれる、優勝賞金4000万ドル(約44億円)、交通・運輸分野の新しい技術の応用アイデアを都市間で競うコンペを実施した。

 スマートシティ・チャレンジには全米78都市から応募があり、16年3月に7都市をファイナリストとして発表(ちなみに発表会場は、最先端テクノロジーの祭典「SXSW:サウス・バイ・サウスウエスト」という粋な計らい)。そして、同年6月には、オハイオ州コロンバス市が優勝都市として選定された。この間、僅か半年という驚異的なスピードで争われた、国を挙げての一大イベントであった。

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