モビリティ革命「MaaS(Mobility as a Service)」の実像に迫る特集の4回目。製造業からサービス業への転身を図るトヨタ自動車が、「ここだけは譲れない」と語気を強めるのが「モビリティサービスプラットフォーム(MSPF)」だ。専用の自動運転EV「e-Palette Concept」も発表し、米ウーバー、米アマゾン、中国・滴滴出行(ディディチューシン)、マツダなどと“同盟”を組んだ。その戦略とサービスの中身は――。ウーバーCEOのダラ・コスロシャヒ氏の言葉や、日産自動車の動きも交えながら解説する。

モビリティサービス専用の自動運転EV「e-Palette Concept」を初公開した際、アライアンスパートナーも同時に発表。ウーバーやアマゾン、滴滴出行などの幹部が登壇した © The Asahi Shimbun
モビリティサービス専用の自動運転EV「e-Palette Concept」を初公開した際、アライアンスパートナーも同時に発表。ウーバーやアマゾン、滴滴出行などの幹部が登壇した © The Asahi Shimbun

 プラットフォーマーとしての覇権を狙うトヨタは、その“第一の矢”として、すべてのクルマをコネクテッド化した「つながるプラットフォーム」の構築を図る(1回目の記事参照)。

 その戦略をトヨタ自動車コネクティッドカンパニー・コネクティッド統括部長の山本昭雄氏に聞いた。

 「もはや、つながらない製品は生きていけない。『EV』『AI情報化』『自動運転』『シェアリング』、これら4つの大きな流れをすべて支えているのがコネクテッド。夏に発売する新型クラウンにDCM(データ・コミュニケーション・モジュール)を標準搭載し、2020年までには少なくとも日米で販売する全車(トヨタ車・レクサス車)への搭載を目指す。つながるクルマを飛躍的に増やすことにより、車内の制御データをビッグデータとし、MSPFの重要な要素の一つとして整備できる。カーシェアリングや保険といった提携企業にMSPFをその他のツールと共に提供し、その先のお客様(消費者)に付加価値を付けたサービスが届けられる。つながるクルマが増えればデータ量が増え、データ量が増えればサービスが増える――こういった構図を目指している」

「DCMでは、ワイパーやブレーキ、ドアの動き、燃料の残量など、クルマの挙動をかなり細かく把握できる。こういったものが重要なビッグデータとなる」(トヨタ・山本氏)
「DCMでは、ワイパーやブレーキ、ドアの動き、燃料の残量など、クルマの挙動をかなり細かく把握できる。こういったものが重要なビッグデータとなる」(トヨタ・山本氏)

 昨年でいえば、グループ全体で1000万台超の世界シェアを、データの源泉あるいはユーザーとの接点として生かす。そしてメーカー、ディーラー、提携企業、ユーザーを有機的につないでいくプラットフォームを構築する。「クルマと通信プラットフォーム、ビッグデータをためるデータセンター、それにオープンにアクセスできるAPIを1つのパッケージとして提供。ここまでやっている企業はまだないと思う」と、トヨタ自動車副社長でコネクティッドカンパニー・プレジデントの友山茂樹氏はMSPFについて自負する。

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