米グーグルの親会社、米アルファベット傘下のサイドウォークラボが、カナダ・トロント沿岸部に構築予定だったスマートシティの事業を2020年5月7日に中止した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的な大流行)が理由との発表だが、実際にはどうだったのか。スマートシティだけでなく、その前提となるDX(デジタルトランスフォーメーション)にも詳しいエヌプラス代表取締役の中村祐介氏が、失敗の本質を読み解く。

スマートシティ事業の中止を発表したカナダ・トロントにあるサイドウォークラボの本社(写真/Shutterstock)
スマートシティ事業の中止を発表したカナダ・トロントにあるサイドウォークラボの本社(写真/Shutterstock)

 サイドウォークラボ(以下、SL社)のCEO(最高経営責任者)であるDaniell Doctoroff氏は、ブログで次のように述べている。

 前例のない経済不確実性が世界とトロントの不動産市場に広まるにつれ、ウオーターフロント・トロント(Waterfront Toronto:以下、WT)と共に進めてきた、12エーカーの計画のコアな部分を犠牲にすることなく、財政的にそれを実現することは困難となりました。そのため多くの審議の結果、私たちはこれ以上キーサイド(Quayside)計画を進めることはできないと判断し、WTに伝えました。*1

データプライバシー問題への説明責任

 しかし、SL社は新型コロナウイルス感染症のパンデミックが起きる前から、この計画に問題を抱えていた(参考記事「スマートシティの3類型から見る日本の勝ち筋」)。当初WTが12エーカーのエリアへの提案を求めたのに対し、SL社は約800エーカーものエリアに対する計画書(MIDP)を発表。その野心的過ぎる内容も進展を遅らせていた要因の1つといえるが、主な問題はデータプライバシーについての説明責任を果たしきれておらず、市民側との壁があったことにあるのではないか。

 つまり、SL社の親会社であるアルファベットも含め、この都市でデータがどのように収集され、保護されていくのか。そしてそのデータを誰が所有するのかについての批判だ。街にはセンサーが設置され、住民の行動はすべて記録に残されるというスマートシティを、収集したデータを収益化してきた企業(=グーグル)が実施することに、多くの市民が不信感を抱いた。