スマートシティは1)大企業主導型、2)国家・自治体主導型、3)市民参加型(共創型)の大きく3つのタイプに分類できる。動きの速い大企業主導型が注目されがちだが、パブリックセクターやソーシャルセクターとのつながりが必要不可欠だ。スマートシティについてその動向を調査するだけでなく、参画経験もある中村祐介氏が、市民への目配りが必要なことを提言する。

スマートシティのイメージ(写真/(C) greenbutterfly - stock.adobe.com)
スマートシティのイメージ(写真/(C) greenbutterfly - stock.adobe.com)

 2020年早々、トヨタ自動車が「CES2020」で静岡県裾野市にスマートシティ「ウーブン・シティ」を建設すると発表したのは記憶に新しい。19年は、米グーグルの兄弟会社サイドウォークラボ(Sidewalk Labs)がカナダのトロントにあるウオーターフロント地区にスマートシティを構築する提案を発表した。スマートシティは、これらに限らず10年ごろから世界中で取り組みが進んでいる。

 背景には、世界が急速な都市化の道を進んでいること、そして環境に対する負荷の増大と経済成長の鈍化がある。2018年の国連の調査によると、世界人口の55%程度が大小の都市に居住して、エネルギーを消費している。そしてこの都市化率は2050年までに70%近くに達し、都市部でのエネルギー消費をさらに押し上げると見られているのだ。

 変化する社会に都市そのものを適応させ、より持続可能なものへとアップデートする──。それがスマートシティの狙いであり、現在そのモデルケースを各国・各企業が模索している段階だ。いったんロールモデルができれば他の国・地域へ転用することもでき、行政側・企業側共に収益が見込める。また、スマートシティには、MaaSも5Gも、IoTも入れ込めるため、その存在感、収益規模はかなり大きいものとなるはずだ。

 世界中が注目しているスマートシティだが、その誕生の仕方から現在、大きく3つのタイプに分類できる。1つ目は大企業主導型、2つ目は国家・自治体主導型、3つ目は市民参加型(共創型)だ。

スタートが速い大企業主導型と国家・自治体主導型

 冒頭に挙げた裾野市とトロントは大企業主導型の典型だ。サイドウォークラボが19年6月に提出した計画書(Draft Master Innovation and Development Plan-MIDP)に目を通すと、総投資額は390億カナダドル(約3兆2200億円)で、同社も9億カナダドル(約743億円)以上の投資をするとある。

 日本に限らずこれほどの計画と投資ができる企業は少ないだろう。スマートシティはまだインフラ投資のフェーズのため、企業が陥りがちな目先の売り上げや利益の増減を重視する考え方だと、収益モデルが組み立てにくいのだ。スマートシティに関しては、この分野を生産的と捉え、我慢強く(Patient)投資を続け、必要に応じて投資対象に関わっていく姿勢が求められている。

サイドウォークラボのオフィスがある米ニューヨークのビル(筆者撮影)
サイドウォークラボのオフィスがある米ニューヨークのビル(筆者撮影)

 また、仮に大企業主導型でできるとなった場合でも、今度はビジネスセクターの考え方が強すぎ、国家・自治体や市民などのいわゆるパブリックセクターやソーシャルセクターへの対応を忘れがちだ。スマートシティは都市なので、そこには行政もあり、市民もいる。これらをおろそかにして企業の思惑が一人歩きすれば、反対運動などが起きてしまう。サイドウォークラボも、まさに今この問題で悩まされている。企業目線だけでは解決できない課題が「まちづくり」にはある。

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