ようやく始まったマーケティング分野でのAI(人工知能)活用。マーケターの多くは、顧客の行動や嗜好を理解するには、膨大なデータをAIで分析する必要があると理解している。課題は、マーケターやCEO(最高経営責任者)など“ヒト”が進化できるかどうかだ。

マーケティングへのAI活用は、マーケターの進化がカギを握る(画像)

 マーケティング分野でのAI(人工知能)活用は、最近、ようやく始まったばかり。ただ、マーケティング施策を立案・実行するために、AIを活用してデータを分析する動きは、2020年までに急速に進むだろう。

 なぜなら、デジタルマーケティングに従事しているマーケターは、顧客の行動や嗜好を理解することの重要性に気づき始めている。特に大企業のマーケターは、新規顧客を獲得したり、既存顧客とのエンゲージメントを強化したりするには、データ、それもファーストパーティーデータの分析が必要であることを、実感しているからだ。

 一方で、デジタル広告を扱う各社は、AIベースのマーケティングソリューションの開発・提供に投資を続けており、リターゲティング広告など特定の用途に限定されたソリューションや製品が、現在も日々新たに紹介されている。この事実そのものが、AIの活用がマーケティング分野に有効であることを示しており、マーケティングソリューションに用いるAI技術は、この数年で急速に進歩していく可能性が高い。

 顧客の行動や嗜好を、企業がより深く理解できる唯一の現実的な方法は、顧客データを分析し、顧客一人ひとりの好みや一般的なトレンドに関する志向といった顧客インサイトを得ることだ。それには膨大なデータの分析が必要になるため、データの充実とAIの活用は避けて通れない。ただ、AIを利用してデータから適切な顧客インサイトを獲得できるようになれば、企業はマーケティング戦略においてワン・トゥ・ワンアプローチを取ることが可能になる。具体的には、企業は顧客一人ひとりに合わせて、既存のサービスの質の向上、新たな機能の開発、それぞれの顧客に合わせてカスタマイズされたプロモーションなどを展開できるようになる。

 もっとも、AIはマーケティング上のすべての問題を解決できるわけではない。CRM(顧客関係管理)システムで管理する膨大なデータを分析・活用して顧客のインサイトを入手できている企業は、今のところ、まだ少数だ。 AIを有効に活用するには、分析に必要な一定量(ボリューム)のデータを収集し、構造化されたプロセスを正確に実行する必要がある。こうした環境でAIを稼働することができれば、AIは休むことなく正確にデータを処理、分析するはずだ。

課題克服に必要な条件とは

Appier 製品マネジメント担当部長 マジック・ツー(Magic Tu)氏
Appier 製品マネジメント担当部長 マジック・ツー(Magic Tu)氏

 実はAIを活用したマーケティングを推進するには、テクノロジーの急速な進化と同様、マーケターの知識面、スキル面での進化が必要になる。例えば、マーケティングキャンペーンや施策に関して明確で現実的な目標を立てること。 AIプラットフォームをマーケティングに導入すると決定する場合、AIが分析するための有用なデータのフォーマットやデータタイプを特定すること。マーケティングの目的達成のために支援してくれるにとどまらず、共に課題の解決ができるベンダーを選ぶこと、などがそれだ。

 自社をデータ主導の企業へ進化させるためには、CEO(最高経営責任者)やCIO(最高情報責任者)といった意思決定者の決断も重要になる。例えば、経験豊かなCDO(最高データ責任者)もしくはデータサイエンティストを雇うこと。彼ら彼女らがAIベースのソリューションを扱ったことがあれば、AIを活用した、会社全体に最適化されたデータマネジメント戦略を立案、実行してくれるはずだ。もしもAIに詳しいCDOやデータサイエンティストを雇用できなければ、既存の役員クラスの人々にデータやAIの重要性を理解させることが必要になる。役員クラスの人々がこれらを理解していなければ、データ主導の企業へと進化させることは難しい。

 もう1つ。AIの導入に当たって、汎用型AIではなく、特定の経営課題を解決するための特化型AIを導入し、ある程度の経験を積んでからAIの導入範囲を増やすという企業が、早く成果を出すだろう。米アイ・ビー・エムが推進する「Watson」のような汎用型AIは、特定の領域の課題解決に使うにはAIモデルの設計からして時間と手間がかかる。一方、特化型AIは、特定の課題解決のために最適化されているため短時間にインストールができ、簡単にマーケティング施策に組み込める。マーケターがタイムリーにキャンペーンを実施し、迅速に成果を出すには、汎用型よりも特化型AIが向いていると言える。

 2020年までには、AIベースのソリューション導入やそれに伴うAIとマーケターとの協働作業が、多くの企業で当たり前になっていると予想する。この数年のうちに、私たちAppierをはじめ多くのAIベンダーが、データサイエンティストでなくマーケター自らが適切なデータセットを選定し、分析し、それを施策に生かせるようなツールを開発するし、さらにそれらのツール間の連携も進んでいるはずだ。

 AIは膨大な量のデータを休むことなく正確に分析できるため、これまでのやり方では不可能だった画期的なインサイトを企業にもたらす。このインサイトを元にいち早くビジネスを企画実行した企業は、マーケティングに限らず、新規事業の創出でも、競合に対して競争優位性を得られるはずだ。AIにより、マーケターやプロダクトマネージャーは、本能を頼りにする「直感主導」のアプローチから離れ、「データ主導」の戦略に移行することが可能になる。

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