「変なホテル」のブランディングを担当するGRAPHの北川一成氏と共に、広告やパッケージにとどまらない総合的なデザイン戦略の重要性を、実例を基に考える連載企画。今回は毎年約20%ずつ売り上げが伸びている手作りの塩。成功の秘密は絶妙のネーミングにあった。
脱サラファクトリーの「自凝雫塩(おのころしずくしお)」は、兵庫・淡路島の海水のみで作る塩だ。同社の末澤輝之社長は、「人がおいしいと感じる塩は、地球に海ができて生物が誕生した、およそ35億年前の古代の海水から作る塩ではないか」と仮説を立て、薪と鉄釜で海水を約40時間かけて煮詰めるなど、独自の製法を採っている。創業は2013年。塩作りに従事する従業員は、末澤社長を含めて2人だけという小さなメーカーだが、取引先は500社ほど。販路は、淡路島の道の駅や土産物販売店をはじめ、全国のオーガニック食品を扱う店舗やネットショップなど。
知る人ぞ知る塩で、海の成分を凝縮した手作りの塩を求めている消費者は少なくないようだ。購入者の多くはリピーターで、「売り上げは初年度から1.2倍のペースで伸び続けている」と末澤社長。自発的な営業活動は「4年ほどしていない」(末澤社長)が、注文は相次ぎ、供給が追いつかない状況が続いていた。そのため、18年に設備投資を行い、生産量を増やしたという。
業績が好調な理由について「創業時から始めたブランディングの効果も大きい」と末澤社長は言う。ブランディングは、GRAPHの北川一成氏が手掛けている。末澤社長が脱サラして起業したことから決めた社名をはじめ、パッケージデザインやマークなども北川氏が考案。末澤社長は「塩の違いは見た目では分からない。だからこそ、塩作りの思いや特徴を伝えることが重要だ。パッケージデザインには私の塩作りへの思いが伝わるように、感情が揺れ動く仕掛けがいくつも盛り込まれている。それが購買につながっているのだろう」と話す。
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