ツインバードは、2021年11月に企業ロゴを刷新。製品群を整理し、「匠(たくみ)プレミアム」と「感動シンプル」という2つのブランドラインを設けた。その後の戦略転換について、同社の野水重明社長と、共にリブランディングを手掛けた博報堂のアートディレクター・小山秀一郎氏に話を聞いた。
ツインバードは新潟県燕市に本社を構える家電メーカーだ。メッキ加工業からスタートし、洋食器などを手掛けた後、結婚式の引き出物などに利用されるカタログギフト市場に参入。そこに家電製品を取り入れるなどして事業を拡大してきた。並行して、家電量販店にも販路を広げてきたが、近年は少子高齢化や結婚式のスタイルの変化などによる市場の縮小に直面する。これを受け、2021年11月にはリブランディングを実施し、企業ロゴを刷新。「匠(たくみ)プレミアム」と「感動シンプル」という2つのブランドラインを設けた。
感動シンプルは、必要な機能をシンプルに追求した家電のベーシックラインだ。「コードレススティック型クリーナー」や「スチームオーブンレンジ」といった製品がある。例えば22年11月に発売した「中身が見える冷蔵庫」は扉を開けずに庫内を確認できるだけでなく、小柄な人でも無理なく利用できるように高さを低くしたり、大容量の冷凍室を腰の高さに配置したりするなど、使いやすさに配慮したことで人気を集めている。
もう1つの匠プレミアムは、その道の“匠”にしか到達できない技を最新技術で再現するというコンセプトだ。「コーヒー界のレジェンド」と称されるバッハコーヒー(東京・台東)代表の田口護氏が監修し、専門店の味を追求した「全自動コーヒーメーカー」や、ヘッドスパ美容研究家の山本幸恵氏が監修し、サロンのヘッドスパを再現した「防水ヘッドケア機」がある。
リブランディングを主導してきたツインバードの野水重明社長と、そこに深く関わってきた博報堂 hakuhodo DXD 小山秀一郎アートディレクターに、リブランディングを行った理由やそれによる戦略転換について話を聞いた。
大胆なリブランディング
――リブランディングの過程では製品数を約半分に絞るなど、大胆な改革をしました。その理由は?
野水重明社長(以下、野水) 08年ごろより、少子高齢化などから大量生産・大量販売型のビジネスが成り立ちにくくなってきました。例えば結婚式も、大がかりな披露宴ではなく家族婚にするなど多様化しています。我々がメインとしてきた市場が大きく様変わりしていく中で、寄り添うべき顧客層をもっと鮮明にして、付加価値を創造して満足度を高め、ファンを増やしていくほうがツインバードの規模や特徴に合っているのではないかと考えました。
そのための取り組みの1つとして、ブランディングを改めてしっかりやっていこうと進めてきました。いきなりではなく、本社社屋の環境整備や、東京支社のビルのリニューアル、カフェの設置など、少しずつ積み重ねてきました。リブランディングという表現を鮮明にしたのは、博報堂さんとの取り組みが始まってからです。
ツインバード 社長
――匠プレミアム、感動シンプルという2つのブランドラインを設置した狙いは?
野水 18年から19年にかけて、高付加価値型のものづくりを進めていこうという方向性がだんだん見えてきました。自社製品のラインアップを分析すると、全自動のコーヒーメーカーや理美容品など趣味嗜好で使うもの、冷蔵庫や電子レンジといった毎日使う実需のもの、我々が得意としてきた冠婚葬祭マーケットに合わせた多種多様な製品(アイデア商品のようなもの)に分けられた。
この記事は会員限定(無料)です。