日本発のインテリアブランド「Francfranc(フランフラン、東京・港)」は、2022年で30周年を迎えた。20~30代の女性を中心に支持を集め、独自のポジションを確立している。21年、22年には過去最高水準の売り上げと営業利益を達成するなど、業績は絶好調だ。成長の源泉は顧客の口コミにある。同社の顧客はとにかく熱量が高く、SNSを通じて積極的に商品情報を発信する。これまでに投稿されたUGC(ユーザー生成コンテンツ)は1億1500万件にも上る。企業側から特別な働きかけをせずとも、客が客を呼ぶサイクルはどのように生まれているのだろうか。

Francfranc代表取締役の佐野一幸氏(左)と商品開発部部長の東靖葉氏
Francfranc代表取締役の佐野一幸氏(左)と商品開発部部長の東靖葉氏

 「Francfrancで買わないと損するものトップ6」「Francfrancで買えるお薦め1人暮らしグッズ紹介」「我が家のリビング紹介します。ほぼFrancfrancです」……。

 短尺動画SNS「TikTok」には、Francfrancの商品を紹介する動画が多数投稿され、数万件の「いいね!」を集めている動画も多い。このような顧客がSNSに投稿した商品・ブランドに関するUGCは、Francfrancにとって顧客獲得の最大の武器だ。現在のUGCの数は、InstagramとTikTokを合わせて1億1500万件にも上るという。

 同社は生活にプラスアルファして、暮らしを彩る生活雑貨を主力商品としている。新型コロナウイルス禍で自宅で過ごす時間が増え、「イエナカ」需要の高まりが同社にとって追い風となった。さらに購入者がSNSにUGCを投稿し、それがさらなる顧客を呼ぶという好循環を生み出している。その結果、業績も好調だ。2021年、22年ともに過去最高水準の売り上げと営業利益を達成。22年は純利益も伸長させた。

 Francfrancは「無印良品」「ニトリ」「IKEA」などの大手ブランドと並んで想起されるインテリアブランドでありながら、売り上げ規模はそれら企業の10分の1以下。だが、SNSを巧みに使うことで、「20代女性が好む雑貨・インテリアブランド」の調査には必ずランクインするなど、独自のポジションを築いている。

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 UGCは今やマーケティング活動において見逃せない影響力を持っている。購入者が実際に商品をどのように使っているのかを投稿することで、企業目線では伝わらなかった消費者目線での有用性を他の消費者にも認知してもらえる可能性がある。また、購買プロセスにおける「比較検討フェーズ」においても、リアルな口コミは企業発信より信ぴょう性があるものとして重視されることもあるだろう。

 そもそもUGCが多く投稿されていることは、それだけ多くの消費者に使われているものだという証左にもなり、商品やブランド自体への信頼性が高まる。1億件以上のUGCを生み出すために、Francfrancはどのような工夫をしているのだろうか。

コロナ禍で顧客との接点の希薄化が加速

 同社がSNS活用に本腰を入れ始めたのは、コロナ禍に見舞われた20年ごろ。店舗の営業が困難になり、顧客接点がほとんどインターネット上のみになった。店舗は接客を通じて顧客の声に直接触れられる貴重な場だ。それが失われたのは商品開発を含むマーケティングをするうえで致命的。そこで、Instagramのてこ入れに着手した。それまでは自社の公式アカウントの投稿数は、月に30件程度だったが、コロナ禍が本格化した当時は日に2~3投稿、多いときでは月80件の投稿まで増やしたという。

 すると、投稿を増やすごとに顧客からの反響がコメント欄などに集まるようになった。Francfrancのかわいく写真に映える商品と、同社のメイン顧客層である20~30代女性は、SNSとの相性がよく、投稿数を増やすことで商品やブランドが消費者の目に留まる機会が増えたのだ。

 また、競合他社商品の口コミは「これ欲しい」「この商品よかった」といった商品に関するコメントが多い傾向がある。対して、「Francfranc」で検索すると「かわいい」というキーワードで語られていることが圧倒的に多く、21年1年間で「Francfranc」と共に検索されるキーワードにおける「かわいい」出現率は5.5%だった。これは他社と比較して圧倒的な出現率だという。

「憧れ感」と「できそう感」のバランスでUGCを生む

 フォロワーから直感的に「かわいい」というワードを引き出すような投稿を心掛けることで、結果的にUGC投稿のきっかけにもなっている。公式アカウントの投稿を通じて、「こんな部屋になったらいいな」という憧れを生み出しながらも、「これなら、まねできそう」というフックをつくる。この「憧れ感」と「自分でもできそう感」のバランスが、UGCの投稿を促進する秘訣。公式アカウントを通じてフォロワーが実際にまねしてみたくなる投稿をすることが、UGCを生むうえでは重要だ。

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