サブスクリプション(定額課金)、シェアリングサービスの波が、タレントを起用する広告のジャンルにまで押し寄せてきた。これまで高額だった有名タレントを起用した広告を、従来よりも大幅に安く、月額制で利用できるサービスが相次いで登場している。主要な事業者のサービス内容や活用実例に迫る。
有名タレントを自社の広告に起用しようとすれば、数千万円規模からの高額な広告契約料がかかるのが一般的だ。中小企業はもちろんのこと、中堅・大企業でも売り上げ規模が小さい商品・サービス群であれば独自の広告キャラクターを立てるのは難しい。
ある意味当たり前で最初から諦めていた有名タレント広告の世界に今、サブスクリプション&シェアリングの導入で利用のハードルを格段に下げるタレント広告サービスが続々と登場している。
利用できるのは、契約タレントの写真(肖像)素材。広告・販促・PR素材として使えそうなポーズを有名タレントに取ってもらい、多数撮影してストック。利用企業は月額制でストックの中からタレント写真を選んで自社サイトやポスター、販促物などに掲載できる。タレントが自社の商品を手に取って利用しているシーンは難しいが、商品画像の横でほほ笑んだり、キャッチコピーや問い合わせ先を指さしたりといった広告クリエーティブを制作する分には十分対応可能だ。
月額の相場は30万~50万円台が一般的。年間でも数百万円で収まるのだから、従来の10分の1の予算でタレント広告が可能になったといえるだろう。数千万円の広告料を一括で払うことなど多数の企業にとって不可能だったが、月数十万円のサブスクモデルと肖像のシェアリングの組み合わせによって、高根の花だったタレント広告が一気に現実的な選択肢になってきた。
1号タレントはロンブー淳
サブスク型タレント広告サービスが登場したのは2021年1月。新型コロナウイルス禍で始まり、まだ3年ほどの新しいサービスだ。そのパイオニア的存在が、中小企業のチカラ(東京・渋谷)が運営する「中小企業からニッポンを元気にプロジェクト」。その名の通り中小企業支援プロジェクトで、タレント写真サブスクは目玉サービスではあるが、支援サービスの1つという位置づけだ。
就活支援サイト「ジョブコミット」などを運営する人材サービス業のリアステージ(東京・渋谷)がサービスを立ち上げ、その事業を分社化して中小企業のチカラが運営元となっている。中小企業1社が広告に投下できる予算は少額だが、企業を多数集まれば多額になる。一方でタレント素材は写真ストックサービスのように契約者が利用できる形にすれば、タレント側も新たな撮影の負荷なく利用料が入る。同社がこのモデルをロンドンブーツ1号2号の田村淳に持ちかけ、賛同を得たことから、ロンブー淳を1号タレント(公式アンバサダー)としてサービスを開始した。
以降、半年単位で第2期、第3期とタレントを拡充しながら加入企業を募集し、参画企業は22年末で600社を超えた。現在は11人のタレント活用広告の掲載が可能。そのほか、経営者同士のビジネスマッチングイベント、「日本中小企業大賞」の開催、中小企業単独では難しいSDGs(持続可能な開発目標)の活動および情報発信の支援などのプログラムを持つ。
22年1月の日経クロストレンド特集「変わる消費 新しい買い方2022」で紹介したオンラインアウトレットモール「SMASELL(スマセル)」は同プロジェクトの参画企業で、日本中小企業大賞において「SDGs賞 最優秀賞」を2年連続受賞している。現在は公式アンバサダーの紗栄子を広告画像に利用している。
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