サッカーJリーグ3部(J3)のFC今治を運営している今治.夢スポーツ(愛媛県今治市)は、2023年度からの本拠地となる「里山スタジアム」と呼ぶ新しい競技場を、23年1月29日にオープンした。開発コンセプトは名称通りの「里山」で、自然と人が共生し、サポーターや地域の人々の心の豊かさにつながる場所にする。

「里山スタジアム」の全景。スタジアムの周辺にも365日、人々が集まり、心の豊かさにつながるようにする(画像提供/今治.夢スポーツ)
「里山スタジアム」の全景。スタジアムの周辺にも365日、人々が集まり、心の豊かさにつながるようにする(画像提供/今治.夢スポーツ)
NINO(松山市)でデザインした「里山スタジアムプロジェクト」のロゴ。1つの線だけでつながるようにデザインし、里山スタジアムが今治市と一体化していることを表現。色はターコイズブルーにして今治の目の前に広がる海の青と自然の緑をイメージ(画像は「里山スタジアムプロジェクト」のWebサイトより)
NINO(松山市)でデザインした「里山スタジアムプロジェクト」のロゴ。1つの線だけでつながるようにデザインし、里山スタジアムが今治市と一体化していることを表現。色はターコイズブルーにして今治の目の前に広がる海の青と自然の緑をイメージ(画像は「里山スタジアムプロジェクト」のWebサイトより)

 愛媛県今治市のJR今治駅からバスで約15分のところに、地域の中核といえる商業施設「イオンモール今治新都市」がある。新スタジアムは、このイオンモールのすぐそば。それまでFC今治の本拠地だった「ありがとうサービス.夢スタジアム®」(夢スタ)と隣接しており、2021年に着工した。今治市が土地を無償で貸与し、建設の費用は今治.夢スポーツが用意。約40億円をかけて完成させた。

 リニューアルした理由は、夢スタがJ2やJ1に対応するスタジアムになっていなかったこと。夢スタは観客席が5000席だが、J2で1万席、J1は1万5000席をスタジアムに備えるという基準を満たす必要がある。しかもナイター向けの照明施設も不十分だったという。

 J2やJ1への昇格を目指すため、17年ごろから新スタジアムを具体的に構想し、コンセプトを考えていた。当初は20年に着工予定だったが、新型コロナ禍の影響で延期。20年後半から計画が再スタートし、ようやく竣工にこぎつけた。

里山に心の豊かさを求める

 新スタジアムのコンセプトは、自然と人が共生するという意味で「里山」とした。新スタジアムの名称は「里山スタジアム」だ。今治市の自然や景観と共生しながら、今治の魅力を再発見し、人と人が交流する場所をつくりたい、という同社の思いを具現化しようとした。

 FC今治を運営する今治.夢スポーツは、サッカー日本代表監督だった岡田武史氏が会長を務め、企業理念として「次世代のため、物の豊かさより心の豊かさを大切にする社会創りに貢献する。」を掲げている。そこで新スタジアムを検討する中で、外部識者のアドバイスも加えながら開発メンバーで議論を重ねた結果、心の豊かさにつながるとして“里山”というキーワードが出てきた。

 「たとえ試合がない日でも365日、サポーターや地域の人々が集まり、にぎわう場所として新スタジアムをリブランディングした。里山のように、人々の心の拠り所となるような場所にしていく」と、FC今治/今治.夢ビレッジ取締役 新スタジアムプロジェクトリーダーの吉田進一氏は話す。

 今治.夢ビレッジ(愛媛県今治市)は里山スタジアムの建設を担う企業で、今治.夢スポーツの子会社になる。さらに梓設計、りんかい日産建設、高野ランドスケーププランニング(札幌市)が里山スタジアムの設計・建設などを担当。このほか、サポーターや地域の人々とFC今治を結ぶコミュニケーションデザインなどには、デザインスタジオのNINO(松山市)が携わっている。

 「ローコストでもにぎわいを生み、造り込まずに“余白”を生かしたスタジアムという新しい方法や考え方を実践している。周囲に開かれており、誰もが気軽に立ち寄ることができるようにした」と、開発に参加した梓設計の専務執行役員スポーツ・エンターテインメントドメイン ドメイン長プリンシパルアーキテクトの永廣正邦氏は言う。

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