見る人によって違う情報を映し出せる次世代型ディスプレーが、日本上陸間近だ。その場に100人いても100通りの情報表示が可能。空港などの案内板の他、街中や商業施設などのデジタルサイネージでパーソナライズされた情報を届けられるようになる。広告やエンタメ活用も有望分野だ。

米デルタ航空と米スタートアップのMisapplied Sciences(ミスアプライドサイエンス)が、デトロイト空港に設置した次世代ディスプレー。利用する便の搭乗口など、自分向けの情報が見られる(写真/デルタ航空)
米デルタ航空と米スタートアップのMisapplied Sciences(ミスアプライドサイエンス)が、デトロイト空港に設置した次世代ディスプレー。利用する便の搭乗口など、自分向けの情報が見られる(写真/デルタ航空)

 空港の巨大な電光掲示板に映し出されたいくつものフライト情報の中から、自分が搭乗する航空便と搭乗口、運行状況の情報を見つけ出す。当たり前すぎて何ら疑問を持つこともなかったが、考えてみれば実に面倒な作業だ。使用言語が異なる海外の空港ならなおさらだろう。

 そんな顧客体験を損なう長年の“仕様”にメスを入れたのが、デルタ航空だ。同社は米スタートアップのMisapplied Sciences(ミスアプライドサイエンス)と協業し、2022年6月からデトロイト・メトロポリタン空港に最新のディスプレーを設置した。

 デトロイト空港の保安検査場を通過後、デルタ空港のラウンジ「デルタ スカイクラブ」付近にそのディスプレーはある。設置されたゲートで搭乗チケットをスキャンするか、「Fly Deltaアプリ」利用者は顔認証してからディスプレーの前に立つと、自分が予約した便の搭乗ゲートへの行き方やフライト情報など、自分向けのメッセージだけが表示される。

デトロイト空港に設置されたゲート(写真/デルタ航空)
デトロイト空港に設置されたゲート(写真/デルタ航空)

 しかも、だ。このディスプレーは同時に100人の人が見ても、それぞれに合わせて100通りの情報を映し出せる。すぐ隣に人が立っていたとしても、その人が受け取る情報と自分向けの表示内容とは異なるのだ。隣の人に顔を寄せて、その人が見ている情報をのぞこうとすると、「距離を取ってください!」とアラートが表示され、見ることはできない。たった1つのディスプレーで完全にパーソナルな情報提供が可能なのだ。

 一体どのような仕組みなのか。そして、空港以外ではどのようなロケーションで応用が可能なのか。シリコンバレーと日本に拠点を置くスクラムベンチャーズが23年2月に開催したイベント「SCRUM CONNECT 2023」で来日したMisapplied SciencesのAlbert Ng(アルバート・ウング)CEO(最高経営責任者)を直撃した。

Misapplied SciencesのAlbert Ng(アルバート・ウング)CEO
Misapplied SciencesのAlbert Ng(アルバート・ウング)CEO

89%の利用者がパーソナライズ情報に満足

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