翌日の朝食向けに食パンを買おうとパン店に寄っても、仕事終わりにはすでに売り切れ、といった経験はないだろうか。タカキベーカリー(広島市)が展開するパンのチェーン店「リトルマーメイド」はそうした消費体験を防ぐため、事前にモバイル端末でオーダーして毎日受け取れる、食パンのサブスクリプションサービスを始めた。受け取り当日の正午までに注文すると、午後4時から閉店までの間に店舗で食パンを受け取れる。同サービスは、 JR東日本が展開するサブスク「JREパスポート」上の付加サービスとして提供されている。

JREパスポート内に登場した「食パンのサブスクリプション」。サブスク登録者はモバイルオーダーで、食パンを事前注文する
JREパスポート内に登場した「食パンのサブスクリプション」。サブスク登録者はモバイルオーダーで、食パンを事前注文する

 リトルマーメイドの食パンサブスクは、月額2500円(初月1500円)のサブスクに会員登録すると、通常172円の食パン半斤を毎日受け取れるサービスだ。スマートフォンなどのモバイル端末から事前に注文を受け付けるのが特徴で、会員は受取日の当日正午までにスマホから注文する。すると、午後4時から閉店までの間に、リトルマーメイドの店舗で注文完了画面を見せるだけで食パンを受け取れる。

 利用手順としてはこうだ。JREパスポートのWebサイト、もしくは店頭に置かれたPOPなどに掲示された2次元コード(QRコード)をスマホのカメラ機能などで読み取り、サブスクの登録ページに遷移する。アカウントとクレジットカード情報などの決済手段の登録が完了すると、すぐにサービスを利用できる。現在サブスクに対応している店舗(JR東日本クロスステーションが運営する6店舗)の中から利用する店舗を選択し、さらに2枚切りか3枚切りかを選択すると、注文完了だ。

 購入意思のある顧客の取りこぼしを防ぐだけでなく、正午までに注文を受け付けることで、必要以上に商品在庫をつくることを防ぐ一石二鳥の仕組みになっている。

 このサービスはJR東日本が展開するサブスク「JREパスポート」のラインアップの1つとして開発された。JREパスポートとは、ICカード「Suica」利用者が対象のサービスで、食パン以外にもコーヒー、ラーメン、花束、シェアオフィスの利用など、駅構内(エキナカ)にある店舗の商品やサービスを定額料金で受けられるさまざまなプランが提供されている。JREパスポートは、店舗DX(デジタルトランスフォーメーション)支援会社favy(ファビー、東京・新宿)とJR東日本が協業し、2022年4月から本格始動した。

 そもそもなぜ食パンなのか。ベーカリー業態では、その日につくった商品はその日に売り切ることが多い。そのため、仕事帰りなど遅い時間では商品在庫数が少なくなり、顧客は限られた商品の中から買い物をしなくてはならない。特に食パンは夜の時間帯には在庫がなくなっていることがほとんどで、仕事帰りに購入することは難しかった。

 リトルマーメイドのサブスクは、通勤中にスマホから食パンの取り置きを申し込める仕組みによって、取りこぼしていた顧客層を獲得するのが目的だ。実際一人暮らしの男性客といった層にも多く利用されているという。平均すると月16~17回、多い人では平日は毎日受け取りにくるほど顧客の需要にフィットしている。

 食パンのサブスクでは、JREパスポートで初めてモバイルオーダー機能が導入された点も特徴だ。食パンは取り置きしやすいため、モバイルオーダーと相性がいいことが、採用された理由の一つだ。

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