日本上陸から11年を迎えた家庭用炭酸水メーカー「ソーダストリーム」を手掛けるソーダストリーム(東京・港)が成長を続けている。炭酸水を飲む習慣がなかった日本市場に参入し、7年間で売り上げを10倍にまで拡大した。その裏には、元P&Gマーケターが仕掛けた緻密な戦略があった。

家庭用炭酸水メーカー「ソーダストリーム」を手掛けるソーダストリームは、7年間で売り上げを10倍にまで拡大した
家庭用炭酸水メーカー「ソーダストリーム」を手掛けるソーダストリームは、7年間で売り上げを10倍にまで拡大した

 2011年11月、英国発のマシンが日本に上陸した。家庭用炭酸水メーカー「ソーダストリーム」だ。1903年に英国で創業し、現在はイスラエルに本社を置く。専用ガスシリンダー(高圧液化二酸化炭素)を本体に装着し、水位線まで水を入れた専用ボトルをセットして本体ボタンを押すだけで、好みの強さの炭酸水を作れる。

 炭酸水を飲む文化がある欧州や、健康意識の高まりから炭酸水に注目が集まっていた米国では好評を得ていた。2010年には当時のCEOが「プラスチック汚染から救える商品」として世界展開を決め、アジアの重要な拠点として日本へ進出した。現在は、欧米をはじめ世界46カ国で販売している。日本でイメージキャラクターを務める上戸彩が出演するテレビCMやリーフレットに見覚えのある読者もいるだろう。

 そのソーダストリームが好調だ。7年間で売り上げが10倍に伸長。ここ数年でも、販売数を伸ばしている。生活必需品ではなく購入を迷う人もいたが、新型コロナウイルス禍をきっかけに在宅時間を充実させたいというニーズが高まり、購入の優先順位が上がったことが一つの要因だ。

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 今でこそ、無糖炭酸水や強炭酸水商品などがコンビニやスーパーに並び、炭酸水を飲むことは消費者にとって自然になりつつある。しかしソーダストリームが上陸した当時、日本には炭酸水を飲む習慣が根付いておらず、販売していくうえでの難しさに直面していた。

 ソーダストリームディレクターでマーケティング部長の平野幸恵氏は、「グローバルで通用しているアプローチを押し付けても、日本では受け入れられないだろう。日本ならではの戦略が必要だ」と考えていた。同氏には、プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(P&G)でデジタルマーケティングプランナーを務めた経歴がある。

平野氏
ソーダストリームの平野幸恵マーケティング部長

ソーダストリームが直面した2つのハードル

 炭酸水を飲む習慣のない日本の消費者に便益を示し、いかにソーダストリームを受け入れてもらうか。そのために、平野氏は2つのハードルを乗り越える必要があると考えた。

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