帝国ホテルは2026年春、京都にホテルをオープンする。それも新しく建てるのではなく、祇園にある由緒正しい建物を保存しながら再生させるのだ。内装デザインは新素材研究所の榊田倫之氏が担う。国内外の著名ホテルが軒を連ねる京都で、どのような独自性を打ち出そうとしているのか。帝国ホテルの定保英弥社長と榊田氏に聞いた。
歴史に裏打ちされた日本を代表するホテルである帝国ホテルが、日本文化の伝統と格式を備えた場所として世界から高い評価を得ている京都に――。記者発表会で帝国ホテルの社長を務める定保英弥さんと新素材研究所の榊田倫之さんの対談を聞きながら、両者の邂逅(かいこう)が化学反応を起こし、古くて新しい創造的なホテルになりそうだと強く感じた。
帝国ホテルにとっては東京、上高地、大阪に続く4つ目のホテルとなる。新規開業を行うのは大阪以来で、実に30年ぶりだという。「京都はかねて進出を考えていたところ。帝国ホテルをかの地につくるのは、一つの夢でもありました」と定保さん。
良い物件があればと探していたが、「これは」というものがなかなかなかった。そんな中、「祇園甲部歌舞練場(ぎおんこうぶかぶれんじょう)」を所有する八坂女紅場学園と縁がつながり、願ってもいない場だと考えて決めたという。祇園甲部歌舞練場は京都最大の花街(かがい、お茶屋が集まる場所)とされる祇園甲部の中心部にあり、さまざまな公演を行ってきたところ。春の「都をどり」、秋の「温習会」など、芸妓(げいこ)や舞妓(まいこ)による有名な演目が行われてきた。
新ホテルを建てるのは、この祇園甲部歌舞練場の敷地内にある「弥栄会館」。1936年に建造されたもので、2001年には国の登録有形文化財に、11年には京都市が歴史的風致形成建造物に指定している。かつては映画館やダンスホール、コンサートなどにも使われ、地域の人たちから親しまれてきたが、近年は建物の老朽化や耐震性の問題などによってほとんど利用されていなかったという。
今回のプロジェクトには、歴史ある弥栄会館にホテルという新たな役割を与えるとともに、建物の耐震改修や敷地全体の整備も含まれている。京都にとって貴重な財産を生かしていこうということだ。
デザイナー選考で重視された「4つの視点」
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