伊藤手帳(名古屋市)は1937年の創業以来、手帳の下請け製造に専念してきた手帳メーカーの老舗だ。2012年からは自社ブランド「ユメキロック」を展開。累計10万冊を売り上げた「セパレートダイアリー」などロングセラーが誕生し、成功の礎を築いている。DX(デジタルトランスフォーメーション)がもてはやされる昨今、伊藤手帳はアナログな手帳の進化形を世の中に発信している。その商品開発力の源泉に迫った。
「スケジュール管理やメモ帳に用いるツールとしてスマホを用いる方が増えてきましたが、まだまだ手帳には根強い人気があります。手帳ならではのアナログな魅力が世の人々を引き付けています」と語るのは伊藤亮仁氏(45歳)だ。名古屋市にある手帳メーカー、伊藤手帳の3代目で、代表取締役社長を2008年から務めている。
1937年創業の同社は80年以上の長きにわたって手帳を製造している。経営の柱は手帳の下請け製造事業である。市販商品のOEM(相手先ブランド製造)のほか、社員手帳、学生手帳、ノベルティーといった非売品の製造を受託してきた。現在は50人の従業員が働いており、年間に約1000万冊の手帳を生産している。DXの必要性が強調される昨今だが、手帳に寄せられる根強いニーズを肌身で感じてきた会社だ。
「デジタル化が進むのは自然な流れと受け入れています。一方で、日本に蓄積されている手帳文化を次世代に伝えたい。これは手帳メーカーの使命です」と語る伊藤氏は、“手帳愛”に満ち満ちた熱い人物だ。2012年、自社ブランド「ユメキロック」を立ち上げた理由も、手帳メーカーのプライドに火を付けられたからだった。
「お会いする皆さまから『手帳メーカーの社長は、どのような手帳を愛用しているのか?』と興味を持っていただく機会に恵まれてきました。自社ブランドを立ち上げる以前は、愛用していた他社製の手帳を紹介していました。しかし内心では、絶好のPR機会に他社製品を紹介する状況に悔しさを覚えていました。手帳メーカーのプライドが自社ブランドを立ち上げる原動力になりました」。伊藤氏はそう振り返る。
10万冊突破のロングセラー 「自分が欲しいと思える手帳をつくった」
12年、自社ブランドの第1号商品として伊藤手帳から発売された手帳が「セパレートダイアリー」(税込み3480円から)だ。外見は一般的な手帳だが、表紙を開けば上下段がそれぞれ独立している。簡単に言えば1冊の中に2冊が入っているような仕組みだ。そのため、上段には月間スケジュールを書き込み、下段には週間スケジュールを書き込むというふうに上下を使い分けることができる。スケジュールを長期で見渡しながら短期の予定を書き込むなど、柔軟な時間管理をサポートしてくれる一品だ。
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