2020年1月下旬に始まった新型コロナウイルス感染拡大から丸3年が経過した。新型コロナウイルス禍は長らく経済活動を停滞させ、さまざまな業種・業態の営業を直撃した。もっとも、コロナ禍であおりを食った業種もあれば、コロナ禍がむしろプラスに作用した業種もあり、その落差は大きい。外食・小売りの主要70店について、月次の既存店売上高前年同月比のデータを基に、コロナ直前の19年12月からどれほど回復、成長しているのか。ランキングで検証した。

デリバリー、テークアウト強化でマクドナルドは新型コロナ禍前より既存店売上高を大きく伸ばした
デリバリー、テークアウト強化でマクドナルドは新型コロナ禍前より既存店売上高を大きく伸ばした(写真/Shutterstock)

 新型コロナウイルス第8波は感染者数の減少でようやく収束に向かいつつある。2020年1月末の感染拡大から早3年。緊急事態宣言などの強制的な措置は取られなくなって久しいものの、想像以上にコロナ禍は長引き、感染者数増加の波が訪れるたびに経済再生の出はなをくじかれている。

 3年におよぶコロナ禍は、特に外食・小売り業態に大きな影響を与えた。大手チェーン店の売り上げは、コロナ禍前の水準をクリアしているのか、それともまだ戻れていないのか。各社が公表している既存店売上高前年同月比の月次データから読み解いてみる。

 22年12月、21年12月、20年12月の前年同月比を掛け算することで、19年12月の既存店売上高を超えているか否か、回復具合の目安になる。コロナ禍で大きなダメージを受けたカテゴリーもあれば、追い風になったカテゴリーもある。同じカテゴリーでも明暗が分かれたケースもある。

トップはマクドナルド

 コロナ禍が追い風になった代表格が、バーガーチェーンに代表されるファストフード店だ。「マクドナルド」は、20年12月の既存店売上高前年同月比が107.2%、21年12月が同102.4%、そして22年12月は同115.2%と大きく伸びた。19年12月比では126.5%。全70店の外食・小売りチェーンでトップの数字だ。

ファストフード店の月次データと19年12月比概算
ファストフード店の月次データと19年12月比概算
出所:各社月次データ

 22年12月は、冬の定番商品「グラコロ」や「ビーフシチューパイ」などの期間限定商品が好調だった。ドライブスルー、テークアウト、デリバリー、席で注文・受け取りが可能なアプリ施策など、利便性を高めてきた成果が出ている。22年3月、同年9月の値上げでは来店客数の減少を招くことなく、売り上げ増につなげた。前回から3カ月での再値上げがどう影響するか。20年7月以降、30カ月連続で前年同月比プラスを継続しているマクドナルドの23年1~2月の月次に注目したい。

 「モスバーガー」はもともとテークアウト注文比率が半数超と高く、コロナ禍ではそれがプラスに働いた。22年9~10月には期間限定商品の「月見フォカッチャ」が好評で食材の調達が間に合わず、一時販売を停止するなど、ヒット商品も生み出している。

 「ケンタッキーフライドチキン」は、22年10月に「チキンフィレサンド」など「サンド」が付く商品の名称を「バーガー」に切り替えた。オンライン注文で「バーガー」検索が多く、サンドでは検索結果に表示されなかった問題を解消するためだ。これがニュースになることでバーガー商品の存在が知られ、注文増加につながった。また、クリスマスシーズンにはオリジナルチキンの販売を強化。22年12月23~25日(3日間)の全店舗売り上げが64億円に達した。2期前の20年12月19~25日(7日間)は69億円、前期の21年12月20~26日(7日間)は72億円だったことから、「クリスマスにはケンタのチキン」の定着がうかがえる。

   明暗が分かれたのが牛丼チェーンだ。

牛丼チェーンの月次データと19年12月比概算
牛丼チェーンの月次データと19年12月比概算
出所:各社の月次データ

 「すき家」は、20年12月の既存店売上高前年同月比が101.3%、21年12月が同118.2%、22年12月は同105.4%と3期ともプラスを維持し、19年12月比では126.2%。首位マクドナルドに僅差の2位につけた。すき家は店舗数が1940店舗と、競合の吉野家(1194店)、松屋(992店、別途とんかつ店など209店)より多く、郊外、ロードサイドを中心に出店している。コロナ禍では、クルマで出向いて家族分をまとめてテークアウト購入する需要が多く、これがプラスに働いた。

 吉野家は、コロナ禍に入って21年7月まで前年同月比マイナスが続いたが、21年8月以降はプラスに転じ、トントンに戻している。今後もテークアウト需要は底堅いと見て、テークアウト・デリバリー専門店を22年4月以降、5店舗出店した。

 大量閉店のニュースが相次いだファミリーレストラン業態でもその後、明暗が分かれている。

ファミリーレストランの月次データと19年12月比概算
ファミリーレストランの月次データと19年12月比概算
出所:各社の月次データ

 不採算店を閉店して以降、ロイヤルホストの来店客数、客単価は改善し、既存店売上高は回復している。ファミレスの中では比較的客単価が高く、値上げもしているが、客離れは起きていない。看板メニュー「オニオングラタンスープ」が好評なほか、22年11月にテレビ番組で酷評されたパンケーキも逆に興味を持たれ、足を運ぶ要因になっている。ガストをはじめとするすかいらーくホールディングスは、この3年で約200店舗を閉店しているが、既存店売上高の回復には至っていない。サイゼリヤは閉店の一方で新規出店にも積極的で、この3年で11店舗減にとどまっている。アロスティチーニ(ラムの串焼き)など、品切れになる強いメニューは来店動機になる。今後も値上げしない方針を貫く予定で、客足が伸びる余地はありそうだ。

 コロナ禍前への回復に最も苦戦しているのが居酒屋業態だ。

居酒屋チェーンの月次データと19年12月比概算
居酒屋チェーンの月次データと19年12月比概算
出所:各社の月次データ

 22年12月は、職場や仲間内で3年ぶりの忘年会を開催したグループも多く、前年同月比は大幅増となった。だがコロナ禍前の19年12月と比べると、まだ60%台にとどまっている大手チェーンが少なくない。テレワークの定着で、都心の通勤電車の乗車率、混雑率がコロナ禍前を超えることはなさそうなのと同様、仕事を終えて同僚と繁華街に繰り出すという行動様式が減ったことで、居酒屋チェーンがコロナ禍前水準を回復する道は険しそうだ。

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