ポジティブな投稿が多いInstagram(インスタグラム)だが、ユーザー数の広がりによりトラブルも起きている。10代の利用者も増えているInstagramの安心・安全対策について、米Meta(メタ)の日本法人であるFacebook Japan(フェイスブックジャパン)の担当者に話を聞いた。
Instagramの人気はもはや誰もが知るところだろう。2017年に「インスタ映え」という言葉が「ユーキャン新語・流行語大賞」の年間大賞に選出されたことも印象深い。19年3月には日本国内での月間アクティブアカウント数(MAA)が3300万を突破した。Instagramを運営する米Meta(メタ)は、その後、国内ユーザー数を明らかにしていないが、22年10月のグローバルにおけるInstagramのMAAを20億以上と発表している。
ユーザー層もサービス開始時より広がりを見せている。若年層のリサーチを手掛ける「TesTee Lab(テスティーラボ)」によると、中学生、高校生、大学生が利用するSNSにおいてInstagramはLINEに次いで2位(中学生60.5%、高校生80.4%、大学生81.4%)にランクインしている。10代はInstagramのストーリーズとDM(ダイレクトメッセージ)を多用し、メインアカウントとサブアカウントを使い分け、趣味の情報を収集したり、友人との交流を行ったりしている。
若年層の利用が増えると、プラットフォームとしての安心・安全対策が必要となる。そこで、Metaの日本法人であるFacebook Japan公共政策部ポリシープログラムマネージャーの栗原さあや氏にInstagramの取り組みについて話を聞いた。
「思いやりを言葉に」キャンペーン
「Instagramはサービス開始当初から安心・安全対策を重要視しています」と栗原氏は強調する。
17年9月には、当時、全世界で8億人の月間アクティブ利用者が安心して利用できるプラットフォームづくりを目指し、「#思いやりを言葉に」(#kindcomments)キャンペーンを展開した。世界各国に壁画を設置し、その壁画の前で撮影した写真や動画にキャンペーンのハッシュタグやスタンプを添えて投稿することを呼びかけた。日本では、東京都港区の南青山三丁目の交差点にイラストレーターのChocomoo(チョコムー)さんによる壁画を設置した。このキャンペーンには、「安全対策において他のプラットフォームをけん引するリーダー的な存在を目指す狙いがあった」と栗原氏は説明する。
Instagramを使っている人なら分かるだろうが、投稿の大半はポジティブで好意的なコメントであふれている。しかし、多くのユーザーが利用するようになると、悪意のある目的で使う人が出てくるのも事実だ。若年層に至っては、望まないやり取りで危険な目に遭ったり、学校でのいじめ問題がオンラインでも続いたりするケースもある。現在Instagramが特に注視している分野は、若年層の安全対策だという。
栗原氏によると、Instagramは機能面と啓発面の双方で若年層の安全対策に取り組んでいる。機能面に関しては、「18歳未満の利用者と彼らがフォローしていない大人とのダイレクト機能を制限」「不審な行動を取る大人が、18歳未満の利用者を発見・フォローしづらくする」(21年3月)、「16歳未満の利用者が新規アカウントを作成する際にデフォルトで非公開にする」(21年7月)といった策を講じている。
例えば、ある大人が自分をフォローしていない18歳未満の利用者にDMを送ろうとすると、「このアカウントはあなたをフォローしていないためメッセージを送信できません」と表示される。また、何度もInstagramに“報告”されている不審な大人に対しては、「発見」タブや動画投稿機能の「リール」で18歳未満の利用者が発信しているコンテンツが表示されなかったり、公開投稿にコメントしても自動的に非表示にされたりする。これらの対策により、18歳未満の利用者が不用意に見知らぬ大人とつながることがないよう防御している。
Instagramでは「ペアレンタルコントロール」ツールも提供している。13歳以上の子供に対して、18歳以上の保護者が利用時間やフォロー関係を管理できる機能で、お互いのアカウントで承認すると利用可能となる。保護者が最も気にする「利用時間」の上限設定や、フォロー関係を見守ることができる。
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