阪急阪神百貨店は2023年春、阪急うめだ本店(大阪市)で「GREEN AGE(グリーンエイジ)」と銘打った売り場をオープン。同売り場のテーマである「自然との共生」「サステナビリティー(持続可能性)の大切さ」に賛同したブランドを編集して展開する。アパレルだけでなく、食や雑貨、コスメなども含めた商品構成で、国内ブランドはもとよりラグジュアリーブランドも参画するという。どんな経緯からこの新しい試みに取り組んだのか。ジャーナリストの川島蓉子氏が阪急阪神百貨店の社長を務める山口俊比古氏に聞いた。

阪急阪神百貨店の山口 俊比古(やまぐち としひこ)社長は1963年生まれ。86年神戸商科大学(現兵庫県立大学)卒業後、阪急百貨店(エイチ・ツー・オー リテイリング)入社。2009年川西阪急店長、12年阪急メンズ東京店長などを経て、14年阪急阪神百貨店執行役員、18年取締役。20年4月から現職。京都府出身
阪急阪神百貨店の山口 俊比古(やまぐち としひこ)社長は1963年生まれ。86年神戸商科大学(現兵庫県立大学)卒業後、阪急百貨店(エイチ・ツー・オー リテイリング)入社。2009年川西阪急店長、12年阪急メンズ東京店長などを経て、14年阪急阪神百貨店執行役員、18年取締役。20年4月から現職。京都府出身

 阪急うめだ本店といえば、売り上げでは伊勢丹新宿本店に次いで単店ベースで全国2位の百貨店であり、業界では「東の伊勢丹、西の阪急」といわれている。百貨店は新型コロナウイルス禍当初の苦しい状況から復調している一方、富裕層とインバウンド(訪日外国人)を狙い、ラグジュアリーをはじめ、アート、宝飾、時計などを強化する戦略をとっていて、同質化が進むのではと懸念していた。

 阪急うめだ本店が展開するグリーンエイジは、そういった動きとは一線を画するもの。自然環境への配慮やサステナビリティーは時代が要請する価値の一つであり、それを正面から受け止め、新たな提案を行っていこうという意図が込められている。

阪急阪神百貨店は2023年春、阪急うめだ本店(大阪市)で「GREEN AGE(グリーンエイジ)」と銘打った売り場をオープン
阪急阪神百貨店は2023年春、阪急うめだ本店(大阪市)で「GREEN AGE(グリーンエイジ)」と銘打った売り場をオープン

自然を身近に感じ、自然とともに過ごす暮らし

 阪急阪神百貨店が掲げるビジョンは「お客様の暮らしを楽しく 心を豊かに 未来を元気にする楽しさNo. 1百貨店」だ。「時代が求める楽しさや豊かさを提供していくのが、百貨店の果たす役割ととらえています」と山口さん。グリーンエイジは、まさにこのビジョンの体現を目指している。

 具体的にはどういう売り場になるのか。2300平方メートル弱の面積を割いて展開するというから、それなりの規模だ。「アウトドアでのアクティビティーを通じて自らの暮らしを高めることを掲げた“グリーンネイバーフッドライフ”」と「自然に寄り添いながら、美と健康を実現し、自分自身も持続可能であろうという“グリーンウェルネスライフ”」をキーワードにした2つの小ワールドをつくるという。

 百貨店は組織が分かれていることもあって、ライフスタイルとうたっているものの、領域を超えて編集し、本来的な意味でライフスタイルを提案している売り場は少ない。あったとしても、小さな面積に限られている。その意味で、グリーンエイジは画期的な試みだ。売り場のうち70平方メートルほどは、物販ではなくイベントやワークショップを行うスペースにするという。

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