米グーグル発の「デザインスプリント」をご存じだろうか。製品開発やサービスの改善を行う際、課題の割り出しからプロトタイプ検証までをわずか数日で一貫して行えるフレームワークだ。求人事業のディップが展開するアルバイト・パートの求人サイト「バイトル」は、このデザインスプリントを用いてアプリの改善を実施。改善を実施した当月に、アプリ経由での求人応募数が8%増加する即効性を発揮。さらに改善を繰り返すことで、アプリ経由の応募数は1.7倍に増加したという。

製品やサービスを6つのプロセスで改善するフレームワーク「デザインスプリント」。グーグルが開発した
製品やサービスを6つのプロセスで改善するフレームワーク「デザインスプリント」。グーグルが開発した

 ディップはバイトル事業において、2021年からアプリの強化に取り組んでいる。求人サービスにおいて、特に若年層はWebよりもアプリの利用が多く、バイトルでもアプリからの平均求人応募数はWebサイトの2倍というデータが出ている。また、Webサイトと比較して、アプリは圧倒的に継続利用率が高いこともアプリ強化に踏み切った理由だ。単発での利用ではなく、継続的に利用する層が増えれば、企業出稿の継続が見込めLTV(顧客生涯価値)の増加につながる。

 アプリの強化でディップが取り組んだのは、UX(ユーザー体験)の向上だ。単に広告予算を積み増してアプリの利用者を増やしても、継続利用が見込めなければ獲得効率は上がらない。UXを向上させて広告の獲得効率を高めることで、積極的にアプリへの投資を行う長期的なサイクルを構築するのが狙いだ。そのためにデザインスプリントを取り入れた。UX改善を行った当月には、アプリからの応募数が前月比で8%増加。その後もデザインスプリントを用いて改善を繰り返し、22年9月時点では改善前の1.7倍の応募数になっているという。

 デザインスプリントとは、製品やサービスをテスト・改善する際の方法論を指す。米グーグルが社内で開発し、10年ごろから社外にも提唱し始めた。この方法論では、

(1)理解
(2)定義
(3)発散
(4)決定
(5)試作
(6)検証

 という6つのプロセスに沿って、課題の洗い出しから改善策の実装までを数日間で一気に行う。グーグル日本法人では19年から、この方法論を他の企業にも開示し、活用を支援している。そのうち、現在まで、国内では40社ほどの企業がこの手法を取り入れているという。

 実際に企業がこの方法を実践する際は、課題解決までの進行手順がキットの形で提供され、グーグルの社員が議論の場に参加することもある。デザインスプリントは、数日のうちに改善案が実装されるというそのスピードと、社内の部門を越えた連携を促すことに特徴がある。実際にどのようなプロセスを経る方法なのか。バイトルの成功例を基に見ていこう。

デザインスプリントの6つのプロセス
デザインスプリントの6つのプロセス

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