独フォルクスワーゲン(VW)の電気自動車(EV)モデル群「ID」が日本に上陸した。第1弾がミッドサイズSUV(多目的スポーツ車)「ID.4」だ。エントリーモデルは価格を500万円以下に抑え、2022年11月22日から販売を開始した。“身近なEV”としての実力を探った。
印象的な広々とした室内空間
新型EVの発売や発表が重なった2022年、輸入車として日本にも多くのユーザーを抱えるVWが、新たなEV「ID.4」を発売した。実はVWは過去にEVを導入した実績がある。17年10月にゴルフをベースとしたEV「e-GOLF」だ。同車は輸入車の大定番であるゴルフをEV化したもので、EV専用車と比べるとバッテリー容量は少なく、航続距離も短かった。その弱点を克服すべく、新たに誕生したIDシリーズは、EV専用アーキテクチャー「MEB(モジュラー・エレクトリックドライブ・マトリクス)」を採用しているのが最大の特徴だ。EVを前提とした開発設計を行っているため、電池などのメカニズムを効率よく配置し、十分な容量のバッテリーを収めつつ、室内の広さもしっかりと確保している。
EVであることは、スタイルにも反映される。EVの場合、エンジンがモーターに置き換わるため、パワートレインを収めるスペースが小さくて済む。その結果、ボンネットを短くし、タイヤの配置も車両の四隅に近い位置に配置できる。全長の中で、車軸間の距離を長く取れるので、室内も広くなるというわけだ。
SUVスタイルも、EVではもはや定番と言える。世界的なSUVブームの影響だけでなく、床下に巨大なバッテリーを収める上でも、SUVスタイルは理にかなっている。このためキャビンが広く、大柄なボディーに見えるID.4だが、ボディーサイズは全長4585×全幅1850×全高1640ミリメートルと、国産SUVのマツダ「CX-5」と同等。トヨタ「RAV4」や日産「エクストレイル」と比べても、やや小ぶりな程度だ。従って、日本で乗っても扱いに困らないサイズと言える。
車内の第一印象は、広々の一言に尽きる。これは前述したように、車軸距離が長いことから前後席間の距離を広く取れることにある。後席も床がフラットになるため、3人乗車時のシート中央でも足の置き場をしっかりと確保でき、ゆったりと座ることができる。
前席はダッシュボードやセンターコンソール回りがすっきりとデザインされており、広く感じられるだけでなく、視界にも優れている。メーターパネルは、必要な情報を集約したコンパクトサイズ。シフトレバーは、何とメーター右側に備わるユニークなデザインだ。シフトレバーがフロアやダッシュボード中央にない点も、視覚的な広さにつながっているようだ。ラゲッジスペースは標準543~最大1575リットルと、ミッドサイズSUVとしては平均以上の広さを確保しているので、SUVとしての使い勝手も悪くないだろう。
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