2022年11月3日、大規模なリニューアルを果たした渋谷パルコ4階。婦人服を扱うフロアだったのが一転、古着やインテリア雑貨、アートグッズなどの挑戦的な店が数々並ぶ。リニューアルした4階からは、従来の商業施設像を覆そうとするパルコの狙いが見えてくる。
「モノを買うだけでは充足感が得られなくなってきている。買うことで、どう社会とつながることができるか。モノの背景にあるストーリーを感じられるかが、潜在的に求められてきている」
パルコ渋谷店次長兼マーケットクリエイション部渋谷R&D担当の平松有吾氏は、商業施設に来る消費者の心理の変化をそう分析する。
新型コロナウイルス禍以前の19年11月、渋谷パルコは建て替えによる休業から再開業した。「高単価のラグジュアリーブランドの買い上げもありつつ、コレクションブランド、路面系ブランドなど、ファッションが全体的に好調だった。食やアートなど、主力のMD(商品政策)も軒並み好調で、それぞれ買い回りも発生していた」と平松氏は振り返る。
ところが、コロナ禍を経て、来店客の求めるものが変わった。ネットショッピングやD2C(ダイレクト・ツー・コンシューマー)ブランドの台頭など買い物スタイルが多様化し、過当競争に。「(渋谷パルコは)21年、22年に前年比130~150%で売り上げが伸び続けていて好調」としつつも、「サスティナビリティといったテーマ性や付加価値を消費者に体験してもらうことがポイントになってきている」と平松氏は指摘する。
そうした発想のもと、出店テナントをゼロベースで誘致し直し、22年11月3日にリニューアルしたのが、渋谷パルコ4階だ。同フロアは婦人服の人気ブランドを集め、いわゆる典型的な商業施設といった顔ぶれだったが、来店客のニーズや買い物スタイルの変化によって苦戦するようになっていたという。リニューアルを経て、従来の商業施設とは一線を画する店が立ち並ぶようになった。
例えば、ヴィンテージのECモール「VCM(Vintage Collection Mall)」(以下、VCM)。古着をECで販売するプラットフォームだが、渋谷パルコ10階の屋上広場で古着屋を集めたマルシェイベントを繰り返し開催。好評を博していた。それを受け、満を持して常設店が渋谷パルコ4階にオープンした。
VCMを展開するGrimoire(東京・渋谷)の十倍直昭社長は、「古着の知識がなくても、『かっこいいな!』という感情が大事。たくさんのブランドが並ぶ商業施設の中でヴィンテージの個性を発揮させていきたい」と意気込む。
インテリア雑貨店の「Archives」も存在感を放つ。同店は、商品を引き出しの中に入れて販売するスタイル。商品を探し、確認するには1つ1つの引き出しを開けていく必要がある。同店を営むCIRCUS(東京都武蔵野市)の鈴木善雄氏は、「引き出しを開けて商品を探すというアクションによって、予定調和でなく、自身の『好き』という感情を大事にして買い物をしてもらえるようにしている」と話す。
リニューアルでターゲットとしたのは、「モノ、カルチャー、アートに関心の高い層」(平松氏)。年代としては20~40代を想定しつつも、「年齢、性別を超えたオールジャンル」(平松氏)と、あくまでも柔軟に店づくりをしていきたい考えだ。
特に手応えを感じているのは、Z世代に対してだ。「ここ1、2年、古着やヴィンテージに対するZ世代の関心が高く、よく売れている。彼らは、人とかぶらず、自分が本当に欲しい物を探しに来ているような印象」と平松氏は語る。
従来の商業施設が抱えていた課題に挑戦
異色の店が集まる渋谷パルコ4階。そのテナント誘致に拍車をかけているのが、「SKWAT(スクワット)」と題したスペースだ。スクワット自体は、設計事務所のDAIKEI MILLSによる空きスペースを活用するプロジェクト。その一環として、渋谷パルコでも取り組みを進めている格好だ。
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。