UCC上島珈琲(神戸市)は2021年、ペットボトルコーヒー「UCC COLD BREW(コールドブリュー)」を発売。これまで同社の商品はブラックコーヒーの存在感が強く、男性が飲む缶コーヒーというイメージが強かった。そんな中、ブランドの若返りを図るためCMとTikTokを活用。2つを連動させたキャンペーンを行い、20~30代の女性にもアプローチを広げた。

2021年から「UCC COLD BREW」のCMに出演している池田エライザ
2021年から「UCC COLD BREW」のCMに出演している池田エライザ

ハンドダンスで癖になる演出に

 TikTokで踊りを投稿すれば、池田エライザとCMで共演できる――。このテレビCMとTikTokを連動させたキャンペーンで、商品の存在感を浸透させたのがUCC上島珈琲(以下UCC)だ。

 UCCが展開する「UCC COLD BREW」ブランドでは、2022年3月、商品のリニューアルに合わせ、エライザを起用したCMを放映。商品を両手に持ったエライザが、淡々とハンドダンスを踊る演出で、一度見たらクセになるのがこのCMの最大の特徴だ。

22年3月に放映された「やっぱり香るど!」編。ブラックコーヒーとカフェラテをイメージして、それぞれ黒と白の衣装に身を包んだエライザが、並ぶような形で同じダンスを踊る。腕の位置や角度を調整し、一人二役のエライザがシンクロしているような映像に仕立てた

 CMのディレクターを務めた電通クリエイティブ・ディレクターの眞鍋亮平氏は、「CMでは、コールドブリューの香りが良い側面をどう表現するかを大前提に作品を組み立てた。普通なら言葉や映像で商品の魅力を伝えていくのが一般的だが、あえてダンスと歌で表現することで、視聴者に強い印象を与えようと考えた」と語る。

 撮影では一人二役を演じたエライザの踊りを細かく調整し、手の動きや角度を細かく指示した。映像編集時は、複数人のエライザを合成した際に手の動きが幾何学的な図形に見えるよう、綺麗にシンクロしているかどうかにこだわった。

 撮影時を振り返り、眞鍋氏は「撮影当日は『作品を撮りきれるだろうか』と思うほど、監督が細部まで粘る現場だった。エライザさんは何度もペットボトルを手に持ちながらテイクを重ねていたので、『筋肉痛になったのでは』と思うほど(笑)。現場も一体となって繰り返し撮影した」と苦笑いする。

一人二役のエライザが、シンクロしているような動きでハンドダンスを行う。手の位置や角度、それぞれの立ち位置などを細かく調整することで、ユニゾン感を出し、視聴者がクセになるような感覚を与えた
一人二役のエライザが、シンクロしているような動きでハンドダンスを行う。手の位置や角度、それぞれの立ち位置などを細かく調整することで、ユニゾン感を出し、視聴者がクセになるような感覚を与えた

 苦労したかいもあり、CMは大きな反響を集めた。UCCの公式YouTubeチャンネルでは、登録者数約1万人に対して、動画が179万回以上(22年11月末現在)も再生されている。

この記事は会員限定(無料)です。

15
この記事をいいね!する