CMOコミュニティー「The CMO Club」の東京支部に所属する、アメリカン・エキスプレス・インターナショナル デジタルアクイジション&ケイパビリティ担当副社長の友松重之氏、三井住友海上火災保険CMOの木田浩理氏、セールスフォース・ジャパンCMOの鈴木祥子氏の3人が議論する座談会の後編。データ重視、マーケティング重視の組織に生まれ変わるための施策や次世代マーケティングの方向性についても熱い議論が交わされた。
▼前編はこちら データ分析、実は“文系”が有利? 日本のCMOは何が足りない――データに基づくマーケティングが重要である以上、それを推進するための体制づくりも必要となってきます。
鈴木祥子氏(以下、鈴木) その通りです。特に新型コロナウイルス禍を経て、B2C、B2Bを問わず、顧客は即答、即応を求める傾向が強くなっています。つまり、多様化するニーズに合ったパーソナライズされた答えを即時で分析し、対応する体制づくりが不可欠となっているのです。そして、もう一つの大切なポイントが、今後、顧客などのデータの量はさらに増え、2026年には現在の2倍になるといわれていることです。我々日本人の人口が減っていき、マーケティングの人材も増えない中、より少ない人数で2倍のデータを分析し、リアルタイムで対応することが必要になるというわけです。そうなると人海戦術では間に合わない可能性があり、体制づくりを急ぎながらも、半分以上はAIの力を借りないと処理が間に合わない事態になるでしょう。
木田浩理氏(以下、木田氏) AIモデルでは、CDPを構築しどんどん更新する仕組みにすれば、データがリフレッシュされ、何のビジネスドライバーが売り上げにつながるかは、刻一刻と変わってくることになります。すなわち、どこの事業領域が伸びるかは変化するという認識を持つことも重要となります。こうしてAIを使いながらタイムリーなマーケティング戦略を立てていくことが、CMOやマーケターの腕の見せどころになるでしょう。
また、組織づくりの面では、若手を育てることが非常に重要です。私は会社でデータ分析の講習を行い、社内人材を育成しています。ただ、最近は、データ分析をどう使いこなすかというマインドセットも必要だと感じています。そこで始めたのがマーケティングの講習です。部門を超えた全社、数百人に対し、10カ月間にわたり、徹底的にマーケティングの理論とスキルを教える、実践的なワークショップも含めたプログラムを実施しています。そうして、若手のうちから部門を問わず、横断的にマーケティングの基礎をたたき込むことも大切だと考えています。
友松重之氏(以下、友松) 結局、社内の人材が育つとやれるマーケティング施策が増え、施策がうまくいくことで、さらに皆が自信を持って活動できるという好循環が生まれるようになりますね。
木田 各組織にマーケティングマインドやデータ分析マインドを持つ若手が何人かずつでも出てくれば、組織間でもつながりが生まれます。私は全国の組織でそういった人たちを配置し、先端的な知見を持つセンター・オブ・エクセレンス(CoE、組織の中核をなす部署)をCMOである私のチームが担えればと思っています。そうして、分からないことはいつでもCoEに聞ける体制をつくることができれば、会社全体が変わってくると思い、日々取り組んでいます。
鈴木 私は、マーケティング部門でなくても、誰でもマーケターの素養を持った人材になれると思っています。特に若手の方々は、データに基づいたマーケティングのスキルを率先して磨くべきだと考えています。多くの場合、社内のデータは誰でも平等に見ることができ、若手もベテランも同じ土俵の上で勝負できるからです。他の素養に比べれば、マーケティングは若手がプロモーション(成長)しやすい分野であるともいえます。
友松 昔は、社内では声が大きい人が主導権を握りがちでしたが、今はデータを分析できる人が強い立場になれる時代です。知識吸収欲とハングリー精神が強い方で、機会さえ与えれば、有能なマーケターの素養が備わる可能性は十分にあります。後は、いかに我々のような立場の人間が導いてあげられるかでしょう。
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