「スマートストアの利用対象とするのは、1日の売り上げが3万円から30万円ぐらいの小規模な小売店。その規模でも十分に成り立ち、利益が出るモデルを展開していく」。こうした提案で、2022年7月、ICT(情報通信技術)を活用したスマートストア事業に参入したのは、NTTグループのテルウェル東日本(東京・渋谷)だ。3年以内に200店舗へサービスを導入し、5年後に年間売り上げ30億円を目指すという。そのビジネスモデルとは?
人口減少や人手不足、新型コロナウイルス禍下における非接触ニーズなどさまざまな課題を抱える小売店舗。売り上げが減少して黒字が維持できない小売事業者が増え、廃業も年々増加しているのが現状だ。同時に消費者側においても、特に少子高齢化や人口減少が急激に進む地域では、「買い物難民」という社会課題も引き起こしている。
こうした小売店舗や消費者が抱える問題に対応すべく、NTTグループのテルウェル東日本は、小規模な小売事業者でも活用しやすいスマートストア事業に参入した。
スマートストアとは、IoT(物のインターネット)やAI(人工知能)などの最新技術を取り入れることで、売り場の最適化を図る実店舗のこと。2016年、米アマゾンによるスマートストア「Amazon Go」の実証実験に始まり、国内では先行するトライアルホールディングス(福岡市)を筆頭に、大手コンビニも続々と参入している。そんな中、スマートストア後発のテルウェル東日本はどのようなビジネスモデルを描き、3年以内に200店舗へのサービス導入を実現しようと考えているのか。実証実験の模様を取材した。
▼関連記事 次世代スマートストア「トライアルGO」開業 無人店舗も秒読みに東京・新宿にあるNTT東日本の本社ビル。その中にスマートストアの実証実験の舞台となった店舗がある。テルウェル東日本が運営する、建物の清掃や事務用什器(じゅうき)・オフィス用品の販売などを行う企業内売店だ。
利用方法は簡単だ。まずスマートフォンの専用アプリでQRコードを表示し、ゲートにかざして入店する。その後、購入する商品のバーコードをアプリで読み取り、セルフレジでキャッシュレス決済する。後は購入商品を手に、店を後にすればいい。
店の天井にはAIカメラが取り付けられており、来店客の動線分析などに役立てる。また商品棚近くのデジタルサイネージ(電子看板)にはお薦め商品が紹介されるなど、リテールメディア機能も備えている。ゲートとセルフレジを除けば、見た目には従来の実店舗とそれほど違いがない。
スマートストア化で売り上げが向上し、黒字転換
ところが、スマートストア化したことで店舗運営はがらりと変わった。スタッフが3人から1人に減り、最少人数で運営できるようになったのだ。それだけではない。「従来売店方式」で268万円だった月間平均売り上げが、「スマートストア後」は385万円へとアップ。利益率はマイナス10%からプラス9%となり、黒字化に成功した。
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