オーラルケア商品を主力とするサンスターの健康飲料「緑でサラナ」。同ブランドは、2017年からEC(電子商取引)での販売に注力し始めた。その結果、EC販売の売り上げが伸長し、CVR(コンバージョン率)が1.3倍に改善するなどの成果が出た。その中で鍵を握った「顧客起点マーケティング」やUGC(ユーザー生成コンテンツ)活用など、5年間の取り組みの全貌を公開する。

緑でサラナ
「緑でサラナ」は、サンスターが展開する特定保健用食品。2017年からEC販売に注力している

新聞広告では売れていたのに、オンラインで苦戦

 サンスターが緑でサラナのEC販売に注力し始めたのは、2017年のこと。「健康飲料」ということからも想像がつくように、同ブランドは50~70代をメインターゲットとしている。従来は、新聞広告や折り込みチラシを出すことで新規顧客を獲得してきた。競合も少なく、その方法で苦戦はしていなかった。

 一方ではその頃、食品やファッションなどあらゆる商品のネット通販が当たり前に。「運用型広告、ターゲティング広告など、デジタルで打てる施策が増えてきている。そうした中で、(緑でサラナも)デジタルに注力していこうという流れがあった」と、サンスターダイレクト統括部ダイレクト営業部企画グループの西村将也氏は振り返る。

 競合が増えてきていた状況もある中で、デジタル戦略をないがしろにするわけにはいかない。だが、「オンラインのノウハウがなく、最初は苦戦していた」とダイレクト統括部ダイレクト営業部企画グループ長代行の松崎由美子氏は打ち明ける。

 最初にぶつかった壁は、これまでの売り方とEC販売での売り方の違いだ。緑でサラナはこれまで、30缶がセットになった本品6480円(税込み)を販売してきた。新聞広告中心だった時代は、これで一定の顧客は獲得できていた。

 ただECでは、この売り方は通用しなかった。いきなりまとめ買いを選択してくれる顧客はおらず、なかなか売れない。そこで取り組んだのが、期間限定のキャンペーン。無料サンプルやお試し価格で、まずは顧客に緑でサラナを体験してもらう方向に切り替えた。

顧客起点マーケティングの発想

グラフ
緑でサラナのオンライン売り上げの推移。18~19年にかけてはオンラインショップのリニューアル、20年以降はメールや商品同封物のクリエーティブの改善に取り組み、売り上げが上がった

 転機となったのは、18~19年にかけて行ったオンラインショップのリニューアルだ。「良い顧客体験をつくるためには、顧客がマイナスに感じるところを徹底的に取り除いていく必要がある」(西村氏)。こうした発想のもと、契約の変更や解約など、顧客が行動を起こすときに、分かりづらいといったストレスを感じないような動線を考えて、オンラインショップをリニューアルした。

 「リニューアルでは、ページの遷移数、表示スピードなど細かいところにまでこだわった。解約動線が分かりづらいといったことがあると、企業に対してのイメージが悪くなってしまう。長期的に見たときに、またサービスを利用したいと思ったタイミングで戻ってきていただけるようにしておくことが、売り上げにも寄与するのではないか」(西村氏)

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