グローバルのマーケティングリサーチ業界団体が、2022年版の年次報告書を公表した。業域をインサイト産業に拡大したことで、どんな企業が市場のリード役として上位にランクインしているか。また日本のリサーチ市場はグローバルで見て十分な規模と言えるのか。リサーチ業界のご意見番、トランスコスモス・アナリティクス取締役フェローの萩原雅之氏が、リポートの見どころを解説する。
マーケティングリサーチのグローバルな業界団体であるヨーロッパ世論・市場調査協会(ESOMAR:European Society for Opinion and Marketing Research)が2022年9月、年次報告書「Global Market Research 2022」(GMR2022)を公表した。
ESOMARは2020年度版から、業界の業務領域定義を「リサーチ業界」から「インサイト産業」へと変更し、「さまざまなデータを収集・分析し、クライアントにインサイトを提供する産業」を掲げている。従来型の定量・定性調査を主軸とする確立された市場調査領域(Established Marketing Research)の他、以下7分野を新セグメントとして加えた。
・デジタルデータ分析(Digital Data Analytics)
・業界特化型調査&リポート(Industry Reports & Research)
・経営コンサルティング(Consulting Firms)
・ソーシャルリスニング・コミュニティー(Social Listening and Communities)
・企業内フィードバックシステム(EFM:Enterprise Feedback Management)
・DIY型調査プラットフォーム(Self-service platforms)
・サンプルパネル提供(Sample Panel Providers)
上記の新7分野のうち、業界特化型調査&リポートと経営コンサルティングを「リポーティング」(Reporting)、それ以外を「テクノロジー主導調査」(Tech-enabled)とカテゴライズし、確立された市場調査(Established)と比べると、Tech-enabledの躍進が目立つ。
21年の世界のインサイト市場は1188億ドル。Establishedの市場規模が前年比9.1%増の約461億ドルに対し、Tech-enabledは同23.7%増の約440億ドル。21年の市場規模はTechが37.0%を占め、38.8%のEstablishedに肉薄するまでに躍進した。インサイト産業をリードする柱になったといえる。Reportingも21年は前年比9.7%増と成長している。
以下は、ESOMARが選出した世界のインサイト企業(21年)トップ50の上位10社だ。
2位にReporting領域の米ガートナー(インサイト事業売上高47億3400万ドル)、3位にTech-enabled領域の米セールスフォース(同39億200万ドル)、4位にもTech-enabled領域の米アドビ(同38億6700万ドル)がランクインした。8位の英IHSマークイット(同21億3300万ドル)は金融情報サービス提供、9位の米コスター・グループ(同19億4400万ドル)は不動産データ提供で、ともにReportingに該当する。トップ10社のうち新分野を主軸とする企業が半数を占めた格好だ。
なお国内企業は、36位にインテージ(同5億2400万ドル)、45位にマクロミル(同3億3900万ドル)がEstablished領域としてランクインしている。
GMR2022の見どころとして、国別のリサーチ費と広告費のバランス比較がある。人口当たりの数字を算出することで、広告費との比較でリサーチに予算を手厚く投じている国と手薄な国とが明らかになる。リサーチ費総額でランキングしたのが下表だ。
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