くず餅製造・販売を手掛ける老舗和菓子メーカー、船橋屋(東京・江東)。同社の8代目渡辺雅司社長が不祥事で辞意を表明した。問題の発覚から4日目となる2022年9月29日、新社長に就任したのは執行役員企画本部本部長の神山恭子氏だ。日経クロストレンドは現在の思いと今後について聞いた。

9月30日、船橋屋の新社長に就任した神山恭子氏。画像は21年2月に撮影(写真/小野さやか)2021年2月当時)
船橋屋の新社長に就任した神山恭子氏。写真は21年2月に撮影(写真/小野さやか)

 「ご心配をおかけして申し訳ございません。起こってしまったことを重く受け止め、今は目の前のこと1つ1つに力を尽くすだけです。お客様の信頼回復に努め、会社と社員を守っていきます」。2022年9月29日の昼過ぎ、船橋屋(東京・江東)の神山恭子執行役員(当時)に電話をすると、緊張感のある声でこう語った。

 08年から経営を担う船橋屋の8代目、渡辺雅司社長(当時)が追突事故を起こした。9月26日、現場で相手方に罵声をあびせ、車を蹴る様子がTwitterで拡散されると27日に船橋屋は事実関係を認め謝罪。28日、渡辺社長が辞意を表明し、29日の臨時株主総会及び取締役会を経て、神山氏の社長就任が決定。公式ホームページで30日に発表となった。今後は創業家以外の人物が事業を継承することとなる。

 船橋屋の創業は1805年。450日間発酵させた小麦でんぷんで作るくず餅の消費期限は2日だ。通販サイトのほか、東京、千葉を中心に27店舗で販売し、22年3月期の売上高は22億円を計上している。

 船橋屋はこれまで、先進的な取り組みで話題に上ることが多かった。10年からSNSマーケティングに注力し、自社サイトとTwitter、フェイスブックを連動させ、若年層の顧客を拡大。また、若手社員らが連日飾らない言葉で日常風景や仕事の様子をブログでつづると、15年には5人の採用枠に全国から約1万7000人が殺到する人気企業となった。

 18年には、発酵食品であるくず餅の健康効果に着目し、乳酸菌の研究所を設立。以降、「くず餅乳酸菌」のサプリメントやくず餅乳酸菌入りの飲料、化粧水を発売。21年3月に新業態として東京・表参道に発酵・乳酸菌をテーマにしたカフェ&エステ「BE:SIDE(SWEETS&TREATMENT)」をオープンしている。

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船橋屋本店(写真/小野さやか)
船橋屋本店(写真/小野さやか)
新業態として開店した東京・表参道の「BE:SIDE」
新業態として開店した東京・表参道の「BE:SIDE」

 新社長となった神山氏は、04年の入社以来、通販事業や新卒採用、SNS施策などを手掛けたほか、社内活性化プロジェクトリーダーとして人事評価の構築や新規事業に携わってきた。15年には社員全員が投票で選ぶ「リーダーズ総選挙」で最多票を獲得。33歳で社内のナンバー2、執行役員企画本部本部長に就任している。

 神山氏が新社長に着任した理由について、広報部は「船橋屋の歴史に最も造詣があり、執行役員として製造から販売まで掌握してきた」。また、「執行役員に就任以降もお客様に喜ばれる新商品、新業態の開発、製造・販売スタッフともコミュニケーションを重ね信頼関係を醸成してきた」と説明する。

 217年続く老舗企業の9代目となった神山氏。注目したいのは40歳ながら「船橋屋の歴史に最も造詣があり」という部分だ。

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